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『……に…にんげ、ん?』
「わ…私は…」
『しゃっ…しゃべった…っ』
ぽつりと呟くハルちゃんにクロウリーが話しかけると、さらに驚いたみたい。桃色の瞳をまるくさせながら、目の前であたふたとするクロウリーをじっと見つめる。
「ハルちゃん、彼は…」
『すっ…すみません!!』
「「「え?」」」
突然頭をさげるハルちゃんはおでこをソファーに勢いよくぶつけたみたいだけど、柔らかいから大丈夫かな?
今度は僕らが目をまるくする番で、頭をさげる少女に目をやればわたわたと話し始める。
『わ…私、とっても失礼なことっ…!…あのっ、…えと…』
「あっ…、アレイスター・クロウリー三世である…っ!」
『は…初めまして!ハル・ジュールです…っ』
おかしなタイミングで自己紹介を始める二人に僕はおかしくなってつい笑ってしまうけど、彼らにはそんなこと今はどうだっていいみたい。
『あ…アレイスターさん、私…アレイスターさんのこと…み、見えちゃいけない…ゆ…幽れ…い、かと…勘違い……あ、すっすみません!!』
また深々と頭をさげるハルちゃんは、やっぱりソファーに頭をぶつけた。リーバー班長が慌てて頭をあげさせると、柔らかくても何度もぶつけたからか…ハルちゃんのおでこはうっすらと赤くなっていた。
リーバー班長は素早くタオルを濡らして彼女の額に当てる。まるで本当の父親みたいで僕には微笑ましい光景に見えた。
『く…クロウリー?』
「え?」
何度か瞬きをしたあとで突然彼の名前を呟くハルちゃんに、僕らは驚いて聞き返す。
『エクソシストの…クロウリーさんですか?』
「どうして知ってるんだい?」
茫然とするクロウリーに代わって問いかければ、ハルちゃんは少し恥ずかしがりながらも笑顔をこぼすんだ。
『前に…リナリーに聞いたんです。あの時は忙しくて挨拶に行けなかったけど…、会えてよかったです!…よろしくお願いしますっ!』
「わ、私に…会えてよかったと思っているでアルか!?」
『もちろんです!』
リーバー班長の影に隠れながらもふわりと微笑むハルちゃんは、大分黒の教団(ここ)に馴れてきたみたい。
感激の涙を流すクロウリーのイノセンスについて説明するときの、真剣な表情で聞き入る姿は科学班そのもので僕まで嬉しくなって頬が緩んじゃうんだ。
そんな僕に気づいて、きょとんと不思議そうに首をかしげるハルちゃん。
クロウリーを宥めるリーバー班長が僕を見て笑ってるのが視界にうつる。
何だかんだ言ってきっと僕も父親みたいなこと、してるのかな?…なんてね。
けどハルちゃんが倒れたって聞いてどうしようもなく君に会いたかったこの気持ちは、嘘じゃないよ。
この気持ちがどの目線からかなんてことは…わかんないけどね?
親心からか、それとも?