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ラビが談話室を出て十分もしないうちに、バタバタと慌ただしい音をたててリーバーさんが入ってきた。
「ハル!大丈夫か!?頭とか打ってないか!?」
落ち着きのないリーバーさんの様子から、本当に心配してくれていたことがわかって何だかくすぐったい。
『すみません…、迷惑ばかりかけて……』
「迷惑なんかじゃ…っ」
「大丈夫だよ、ハルちゃん」
リーバーさんの言葉を遮って目の前のソファーに座るのは、遅れて入ってきたコムイさん。
「僕らは迷惑だなんて思ってないからね。」
「むしろ迷惑なのはリーバー班長だよ〜」と話すコムイさんは、いつもみたいにニコニコ笑ってくれて安心する。
『……ありがとう、ございます』
「うん…。ところで、ハルちゃんはどうしてあの場所を歩いていたんだい?」
『あ……きょ…教団内が、知りたくて…歩き回ってたらま…迷子に……』
恥ずかしさからだんだん小さくなる声を、二人は聞きもらさないようにと静かに聞いてくれた。
「…そうだったのか、悪かったな…一緒に行けばよかった。」
『そ…そんなっ!!』
ぶんぶんと両手を振ればリーバーさんは、眉をさげながらも微笑んでくれる。
「ハルちゃん、どうして気を失っちゃったか覚えてるかな?」
『……え…?』
コムイさんの質問に寝起きで不安定な頭をはたらかせる。気を失う前に何があったか。そんなことすぐに思い出せた。体がきゅっと収縮するのが自分でもわかる。
『あっ…青白い顔で…、わ私を見下ろす…お、…男の人が!!び…び、びっくりしちゃって…こ、こわくて…っ』
薄暗い中で見たあの青白い顔をした男の人を思い出すだけで恐怖心に覆われる。
そんな能力なんてないのに、見えてしまったのかも…だなんて考えてしまう。……科学班なのに。
「……あはは」
「仕方がないな…」
苦笑する二人は私の座るソファーの後ろを見上げる。不思議に思って振り向いたけど、私の体はあっという間にコムイさんとリーバーさんの後ろに隠れた。
我ながら見たこともない速さだった気がするくらい。
『……ゃ…っ』
私の後ろにいつの間にか立っていたのは、あの青白い顔をした男の人で…。
『………あれ?』
よく見ると思っていたより、…失礼かもしれないけど…情けない表情をしていて、拍子抜けした。
『あ…青白い…、……あれ?』
怖いはずなのに全然怖くない。二人が困ったようにでも笑っているのがわかったからか、コムイさんたちが一緒にいるからなのか。
私の視線は自然と黒い布で体を隠す青白い男性へと向かった。