03

 







『……ごめんなさい』




ハルが申し訳なさそうに頭をさげれば金髪の男以外の三人が止めにはいる。


「おいおいっ、やめろよ…」

「こちらも驚かしてしまったみたいですしね」

「起きた瞬間悟浄がいたらそりゃあーしたくもなるしなッ」

「ンだと!!サルっ」


いつの間にかぎゃあぎゃあ騒ぎだす二人をきょとんと見る双子に眼鏡の青年は「気にしないでくださいv」と笑いかける。



「助けてもらっておいて家までぶっ壊して…ごめんなさい。……これ以上迷惑かけれねぇし、お世話になりました。」

「…………待て」


家を出ていこうとする双子を止めたのは驚くことに三蔵で全員が彼を不思議そうに見詰める。



「…貴様らは何者だ」

「何者かって言われても…」


苦笑するリクにさっきまで騒いでいた二人が嬉しそうに声をかける。



「出ていくことねェじゃん!」

「茶ァでも飲んでけや!」

「いや…」


断ろうとするリクの視界ににこっと微笑む眼鏡の青年が入った。




――背後に黒いオーラをまとって


「まさか家をこのままにして出ていくつもりじゃないですよねv」

「『………もう少しお世話になります。』」





















「どうぞ」

『ありがとう…』


差し出されたカップを素直に受けとるハルは少なくとも眼鏡の青年には慣れてきたようす。



「僕は八戒といいます、ハル…とおっしゃいましたよね?」

『うん…』



カップを両手で掴み中のホットミルクを息で冷まそうとする姿を見つめながら眼鏡の青年――八戒はにこりと笑った。


「貴方たちは…」

「何うちの妹とイチャこいてんだよ…」

八戒の言葉は同じ顔をした少年に遮られ胸ぐらまで掴まれてしまった。


「あれ、貴方はもっと冷静な方だと思ってたんですが…勘違いだったみたいですねv」

「…うっせ」

『リクは喧嘩っ早いよー。あそこのタレ目みたいにねっ!』



本人に聞こえるようにわざと"タレ目"の単語のボリュームを上げるハルに、悟空と紅い髪の男は「ひっ…」と怯えたような声をあげる。

彼のこめかみに青筋がたったのを確認しつつも八戒はリクに視線をやった。




「貴方もリク…でよろしいですか?」

「……うん…八戒」

「…あれ?」


いつの間にか自身の名前を知っているリクに首をかしげると双子は短く声をあげた。



『なんかあたしたちって耳がいいみたいっ』

「だから……そこっ!」


突然指をさされた二人はゆっくりと振り向くと苦笑いを浮かべる。その二人とは言うまでもなく悟空と紅い髪の男だ。



「聞こえてンだよ…俺は男だってさっきも言っただろうが!!」

「うちのチビ猿がいつまでたってもおまえを男って認めねェンだわ。」

「だってリクが男だったらおんなじ顔したハルも男なんだろ?」









「『……………は?』」


きょとんとする双子に悟空は金色の目をきょろきょろさせ、紅い髪を掻き上げる男は呆れたようにため息をついた。八戒がいつものようににこにこと笑みをうかべつつ悟空に説明を始める。


「あのですねー…彼らは確かに"双子"ですが性別は違うんですよ?見た目は同じようですがリクは男、ハルは女です。」



「へぇー!!よくわかんねぇけど…よろしくなッ」

けろっと言ってのける少年に双子は戸惑うように「『……ども…』」と短く返事をするだけだった。








 

mae ato
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