07








目の前で繰り広げられる戦い。双子の暴れっぷりに、ハリセンを手にした三蔵がぷるぷると震える。



「最近あいつらは暴れてなかったもんなァ…。」

「元気が有り余ってるみたいですねぇ。」

「俺も混ざってこよォーっと!」


様々な反応を示す一行。悟空は如意棒を手にし、彼らの元へと走り出す。感化された悟浄も同じく錫杖を手に飛び出した。








「おまえらの思い通りになんてなってやんねぇ!!」

「く…っ!?おまえたちは必ず連れ帰る!」

リクが紅孩児と対する中、その片割れは黙って近くに座り込む。それも面白くなさそうに。



「(二人まとめて来られたら勝機はない…っ。けれどこいつらは二人で来ようとしない!?)」


紅孩児の考え通り、リクひとり相手にここまで手こずっている。そのため二人で行けば、双子の勝機は目に見えていた。

にも関わらず、片割れのハルは全く動こうとしない。扇も消し去り、胡座をかいたまま肘をつきながら観戦しているようなのだ。



「って何してんだよ!?」

『あぁ、悟空?』

座り込むハルに驚いた悟空は足を止める。敵を前にしてここまでの脱力感。まるで戦う気がみえない。


『今はリクの番だよ。』

「はァ!?」

けろりとそう言い放つ彼女は本気のようだ。悟空はもちろん、それを聞いていた紅孩児も目を見開く。



「そーゆうこった!悟空はまだまだ待ってなっ!!」

「なんでだよッ!!」

間違いなく今回ばかりは悟空が正論である。


『リクより先に来れてたらな…。先を取られた時点であたしがやることなんてないんだよねぇ。リクが負けるはずなんてないから。』

「いや、だからってな…」



何ともマイペースな双子の言い分に、言葉を詰まらせる悟空。あっという間に二人で片付けてしまった紅孩児の側近と妹だったが、腹部や背中を抑えながら何とか立ち上がった。


「ちっ…ガキだからって舐めてたぜッ!」

「やはり…ただ者ではないようですね。」

李厘を支えるように立つ八百鼡は、口元を流れる赤を拭う。



戦う片割れから視線を移す。再び槍を手に構える相手に、ハルは笑いながら扇を広げた。

「……貴女は必ず私たちと共に。」

『あたしはさんぞーたちといたい!!』


ハルへ飛びかかる二人の側近。扇を構える少女の目の前に現れた二つの影。




―――ガキィイ


再び鳴り響く金属音と、抑えられた槍。



「三蔵三蔵って、お兄さん妬いちゃうなァ!」

「うちの子を勝手に連れていくなんて誘拐ですよ?」


ハルの前に背をむけるのは、今まで大人しくしていた悟浄と八戒。蘇芳の瞳をまるくする少女。



『悟浄、いつからあたしのお兄ちゃんになったの?』

「そこに引っかかっちゃいますよね。ハルは。」


声をあげて笑う八戒に頭を抱える悟浄。男と八百鼡は彼らの様子に戦意が削がれてしまう。




『まあ、いいや。ならあたしは紅孩児のとこでも…。』

足を動かそうとして突如感じた違和感。わずかな音に周りを見渡せば、何も変わっていないように見える。


しかし何かに気がついたハルは、闘う彼らを背に何処かへと歩き出した。











mae ato
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -