05
―――ばきっ…
「……うにゃ?」
辺りに強い風が吹き荒れる。突然のことに首をかしげるも、どこかおかしいその風に、正面でうつむくハルを見た。
『バカにするなよ。…ぶっ飛ばしてやるよ!!』
「…っ……」
負けず嫌いなハルは李厘の言葉に口元をひくひくさせながら笑う。
「あーあ。キレちゃった。」
大きくため息をつくリクは気にした様子もなく妹を見る。
「うにゃ?だから手加減できないよ?」
『……っ、ぶっ飛ばす!!』
―――バシッ
『…った……?』
目の前の李厘は猫のように首元を掴まれ、ハル自身は頭を容赦なく叩かれた。……ハリセンで。
「落ち着け。」
『だって!こいつがー!!』
「お前が強いのは知ってる。」
『………むぅ…』
手にしていた扇は消えるも、むすっとするハルはどこか気が済んでいないよう。『ちぇ…』と舌打ちをしながら彼から離れていく。
「にゃ?降ろせよーーっっ!!タレ目!ハゲっ!!」
「…殺すぞ、マジで。」
李厘を《捕獲》した三蔵には肉まんを取り出し、一瞬にして手懐ける。
「三蔵に小動物の世話任せたら完璧だな。」
「お手の物ですね。」
「さすが三蔵。」
「誰が小動物だッ!!」
『……悟空でしょ?』
「「お前もな。」」
「そこまでだ!」
その声に顔をあげれば屋根の上に立つ3つの影。
「また会ったな、三蔵一行。我が妹…返してもらいに来た。」
「紅孩児……!!」
彼の言葉に一行は青筋を浮かべる。
「…あのなァッ、人を誘拐犯呼ばわりすんじゃねぇよ!こいつから来たんだ、こいつっから!!」
「てめぇ妹をどーゆー育て方してやがるんだ!?」
「これじゃあ女版悟空ですよ〜」
彼らの訴えに何とも言えない紅孩児を、両脇の二人が何とか励ます。呑気に挨拶をする李厘を三蔵は投げ飛ばし、あっけなく彼らの元へと返したのだった。