04

 






狂ったように笑い続ける六道に悟浄が顔をしかめる。


「イッちまってるよ、コイツ……どっちが妖怪だってェの!!」

「どっちが妖怪か確かめようじゃねえか!!」



六道が札を手に襲いかかってくる。八戒の指示に三人は強い雨が降り続ける外へ飛び出した。




しかし






「……視界が」

『…雨だからね』


双子が気づくもすでに遅く、八戒の背後に現れた六道が彼の腕を掴む。掴んだだけでジュウッと音をたて、八戒は顔を痛みに歪ませた。



「ぐッ…!!」

「俺の身体は全身が呪符と同化してるんだよ、貴様らは素手で触れることもできんぜ」

「放せよてめェ!!」


ニヤリと笑う六道に如意棒を手にした悟空が突っ込むと、八戒の腕を放し錫杖でそれを受け止める。



べちゃべちゃになった足場に舌打ちをする悟空がふと視線をずらすと、屋根の下で傍観する三蔵と双子。


「三蔵…、それに二人も…ずりー」

「おれら妖怪じゃねぇし!」

『雨キライなんだよね』

「おまえらな…」



こんなときでも相変わらずな双子に悟浄が呆れる。




「どうした、玄奘三蔵!やはり妖怪には手を貸せんか?」


「…違ーよ。俺が手ェ貸さなかろーがどうせ」





三蔵の瞳はまっすぐに六道を見た。




「死なねーもん、そいつら」


『……そだね』

「ははッ…確かに!」



三蔵の言葉に目を伏せるハルと思わず笑うリクに、彼らも笑みを浮かべる。


「…ま、そりゃそーだ」

「死んでもお経上げてくれなさそーですしねぇ」

「くッ…ほざけ…!!」



再び仕掛ける六道に、双子の目の前では三対一で戦う彼ら。黙ったまま見ていたリクは、呆れたようにため息をついた。


「つくづく甘っちょろい奴らだな…」

『……だって…』



ハルは蘇芳の瞳を揺らしながら、隣に立つ三蔵を見上げる。

彼らの実力を考えて、例え呪符に侵された法力僧であろうと三対一で勝てないはずがない。



『……アイツはムカつくけど…三蔵の…ッ?』

言いかけた言葉を思わず飲み込む。頭に乗せられた温かな手は一瞬で離れた。





「下手な義理立てはやめろよ。奴を呪符から開放する術は…たったひとつだ」


雨に打たれる三蔵は淡々と銃を構える。




『…だッ…!』

「だめだ!!」


飛び出すハルより先に三蔵の銃を掴んだのは悟空で、必死に訴える。



「今はあんなだけど、あいつお前の仲間だったんだろ!?」

『……仲間…だっ…た』

「…悟空」

「マジでやめろ!!」


ぼーっと立ちすくむハルはただその場で雨に濡れる。今の彼女には周りを気にする余裕なんてなかった。




「バカ、後ろだ!!」


悟浄の声はしっかり耳に届きハッとするが、おかげでただその光景を目に焼きつけるだけとなる。

















「てっ…!!あたたた…アタマ打ったァ!!」


頭を抑える悟空。



「…あれ?」










『……なん…で?』

「さんぞ…?」




悟空の手に付く赤。


ハルの瞳に映る赤。





「三蔵!!」



悟浄と八戒、リクですら駆け寄るなか、ハルはその場に立ち尽くし目を見開く。

「が…かはッ!」



三蔵の口から出る赤。





六道の振りかぶった錫杖は…



三蔵の腹を貫通していた。









雨の日







 

mae ato
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