04

 



『……ん…』

「ハル!目ェ覚めたか!?」

『………リク?』


ぽやーっとはしているがハルが目を覚ましたのを確認して、リクは三蔵たちを起こしにかかる。



『……なんで、八戒とあのお姉さんが戦ってんの?』

「俺が知るかよ…ッ」


窓の外を見ていたハルは目を見開くと、急いで外へと飛び出した。























「もはやこの命など必要ない…!!」

「待ッ…」

「来ないで!!…ッ!?」



―――カランッ…カラン







『あたしの前で死のうとするなんて、許さない…』


女の持っていた刃は地へ落ちていて、ハルがそれを踏んでいた。そして彼女の表情は冷たく、まっすぐに女を見上げる。



「ハル…?」


八戒が名前を呼ぶとそのままふらりと倒れたため、駆け寄った悟浄がなんとか支えた。



「どうしちまったんだよ…」

「……俺が、聞きてぇよ」

片割れのリクでさえ気を失った妹の異常さの理由がわからない。









―――ゴォツ





「!!」

「きゃあぁあ!!」

「八百鼡さん!?」


八戒に八百鼡と呼ばれた女の悲鳴は吹いた風にかきけされる。




人の気配に空を見上げると八百鼡を横抱きにした紅髪の男。切れ長の瞳は見上げる一行を見下ろす。


「こ、紅孩児様…!!」



八百鼡の言葉に一行は目を見開き、軽快に屋根に着地した男を見上げた。





「三蔵一行だな?…我が部下を引き取りに来た。用件はそれだけだ。」

紅孩児は悟浄の腕の中で眠るハル、蘇芳の瞳をキッと向けるリクを順に見ると八百鼡を下ろしながら告げた。



「貴様らとはいずれ又会うだろう。その時まで命を大事にしておくことだな…」

「………」

「待てよ!せっかく来たんだから…エンリョしねーで遊んで行けって!!」


踵を返す紅孩児を呼び止めたのはもちろん喧嘩っ早い悟空。その手に如意棒を出し、紅孩児へ向かっていく。


「開」


―――ゴォオオ

「だッ…あぁアあ!!!」

「悟空…!!」


簡単に飛ばされた悟空に続いて悟浄が仕掛けるが、それも簡単に止められてしまう。



「子供だましだな」

「オイオイ…マジかよ」

「俺の番か?」


呪文を唱える紅孩児に八戒が瞬時に防護壁を創り出し、なんとか持ちこたえた。




「……ッ…!」


爆発と同時に起こった煙の中から飛び出してきたリクに、さすがの紅孩児も避けきれずリクの手にした剣で腕が傷つく。



「それが術で創り出した剣か…」

「……術じゃねぇ、魔法だ!」


踏み切るリクの攻撃を避ける紅孩児は、再度眠る片割れを見た。





「さっきからうちの妹をちょろちょろ見てんじゃねぇよッ!!」

「……ッ…!?」


辺りの空気がピリッと冷たくなり、冷気が漂う。










「よせ、リク…」



―――カチャ


「………三蔵」



紅孩児の後頭部に添えられた銃口。いつの間にか背後を取った三蔵によるものだった。


「…よく登って来たな…」

「おかげで服が汚れた」

「そんな銃(モノ)じゃ俺は殺せん」

「それくらい見てりゃわかるよ」



三蔵は銃を下ろすと一度息をついた。




「あんたには聞きたいことが山程あるんだ、王子様」



「生憎だが日を改めて出直すとしよう…。この界隈で戦うと民家を巻き込みかねん。今までの部下の非礼は詫びておこう……。」

静かに告げる紅孩児。



「だが、貴様らが我々の計画を阻む限り、必ず貴様らを抹消させてもらう。」

「人づきあいは苦手なんでな、手短に願いたいもんだ」


「同感だ」





そしてその視線は二人のウィザードに。


「貴様らの力、アイツが興味を持たないはずがない…」



その言葉を最後に一瞬でその場からいなくなる紅孩児に、一行は見送ることしか出来なかった。









 

mae ato
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