03

 




『さんぞ〜v』

「…………」


三蔵の首に腕を絡ませへらっと笑うハルは、頬を赤らめ言うまでもなく明らかに酔っぱらっている。



『さんぞ〜♪えへへv』

「……誰だ、こいつは…」

「いや、ハルだろ」


ぎゅうっと抱き着いてくるハルを何だかんだで受け止めながら言う三蔵に、やけに冷静な悟浄が突っ込む。



「おい、おまえの大事な妹ちゃんがクソ坊主に襲われてんぞォ?」

「…逆だろ」

「……んだと?」


―――ガタッ



音をたてて立ち上がるリクは酒瓶を手にしたまま、ハルを抱き止める三蔵に向き合った。




「……」

「…なんだよ」

「……ぶっ殺す」

「「な…」」


ぐっと拳を作るとそれを合わせ発動する魔力。ハルを抱えたまま彼の拳から逃れる三蔵。見かねた悟浄が慌ててリクを止めに入る。



「おま…、やめろって!」

「三蔵が…ヒック、ハルに手ェ…ヒック…らすはららろぉ……ヒック…」





「………酔ってんのかよ」

まぶたは下がりふらふらと歩くリクに悟浄は頭を抱えた。


「酔ってんならもう飲むんじゃねぇよッ!」

「ぅわ…とんなよ、俺の酒!」


手を伸ばすリクに届かない位置に酒瓶を持ち上げる。ハルはハルでいまだに三蔵にぎゅうっと抱き着いていた。




「ちょ…三蔵!どうにかしろッ!」

「ならまずこいつを剥がせ!」

『さんぞ〜v』

「俺の酒!」




「まったく…」






呆れたような八戒の声の後、へばりついていたハルが三蔵からはがれる。それも意外と簡単に。


「ほら、ハル?もう寝なさい」

『はっかい?はっかい〜v』

ふにゃりと笑うハルの頭を八戒が優しく撫でると、ゆっくりとまぶたを閉じうとうととし始めた。



「ほら、リクもいい加減にしなさい」

「………ちぇ」


しぶしぶ椅子に座ると隣ですやすやと眠るハルに影響されてか、すぐに寝息が聞こえ始める。





「…さすが保父さんだわ」

「……あいつに扱えねェガキはいねぇな…」


唖然としながらぽつりと呟く二人は、再び酒に手を伸ばした。









「心配ないですよ、多分僕勝ちますんで」

「え?」


八戒のにこりとした微笑みはボーッと彼らを見ていた女店員に向けられる。



「セクハラおじさんは許せませんもんね。うちの子たちも許せなかったみたいで、ここまで酔いつぶれちゃいましたけど」


「悟空は知りませんけどねv」と笑いながらもまた一杯お酒を飲みほす八戒に、女店員は何やら考え込んでいた。














「…おい、どうした坊主?そろそろ限界か?手がふるえてるぞ。その女顔にゃお酌役がお似合いだぜ」

「……くっ、愚か者が…俺を愚弄するとはいい度胸だ」

「…三蔵?」


クックッと肩を揺らし笑う三蔵に気づいた八戒はまさかと冷や汗を流す。




「魔戒天…モゴッ」

「わーっ!民間人相手にイキナリそんな大技かまさないで下さいっ」


さすがの八戒も慌てて三蔵の口を抑えるが、辺りには経文が舞っていた。



「まだるっこしい勝負はヤメだヤメ!力でツブしてやらぁ、若造ども!!」

「望むところだァ、エロジジイ!やってやろうじゃねぇか」


「まあまあ皆さん、落ちついて…ッ!?」


結局再び乱闘を始める彼らを止めようとする八戒だが、辺りを覆う霧に素早く反応を示す。

「吸っちゃ駄目です!!」


八戒の忠告も遅く、彼らはバタバタと音をたてて倒れていったのだった。








 

mae ato
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