03

 




『……っ…?』



目の前が暗くなり温かさに包まれたハルは、あまりに突然のことに今の状況を理解するのに時間がかかった。


「三蔵…っ!てめ…」

きゃんきゃんわめくリクを宥める八戒。



なぜなら三蔵が片手でハルの頭を自らの胸に押し当てていたから。




「……本当にバカだな、おまえは。」

『……なっ…!』

「信じろ」


三蔵の一言にぐっと言葉を飲み込んだ。



「俺たちはおまえらを裏切ったりしねェ…」

『でも…、あたしたちがいたら…っ、しなくてもいい怪我まで…しちゃうかもしれないんだぞ……?』

小さな声で呟くハルに、三蔵はただふっと笑う。


「おまえらがいれば、するはずだった怪我をしねぇかもしれねぇってことだろ?」

「『…………』」

「…バカなくせに小せぇこと気にしてんじゃねェよ。脳みそブッ壊れるぞ?」



ハルの頭をぐしゃと撫でると腕を離した。ぼーっとする双子の肩にそっと優しく触れるのは、にこりと笑顔を浮かべた八戒。



「ほら、風邪ひきますよ?二人とも火の近くへどうぞ?」

『……あたしたち、一緒にいて…いい?』

揺れる蘇芳の瞳を向けられた八戒はやっぱりいつものようににこりと笑って答える。


「あたりまえじゃないですか…、むしろ帰るなんて言わず一緒にいてくださいv」

『……っ…八戒!!』

「ぅわぁ…っ」

勢いよく抱き着くハルを受け止める八戒がどうしたものかと少女を見れば、胸に顔を埋めて思いっきり泣いていた。


「ハル……」

「…っ、今回だけ…許してやる」

「あはは、どーも」



リクの言葉に遠慮なく泣きじゃくる少女を抱きしめあやす。




「リクくーん?何だか君も涙声じゃない?」

「ばっ…んなわけ…っ!」

「俺があやしてやろうか?v」

そう言って背後からぎゅうっと抱きしめてくる悟浄に、ゾワッと一瞬で鳥肌をたてたリクはすぐさま両手を合わせ魔法を発動させる。


「…っの、クソエロ河童が!!!」

「……っぶ!?」



肘を鳩尾に入れられた悟浄は両手で抑え座り込むが、リクの容赦ない攻撃は続く。


「ちょ…っ、魔法はやめっ…!?」

「問答無用…っ!!」

「ぎゃああぁあ!!!?」

「ぎゃははは!悟浄、バッカじゃねぇの!!」


殺られる悟浄をゲラゲラと笑いながら指をさす悟空。三蔵は呆れた表情で二人を見る。



いつもの一行のように騒がしくなってきたにも関わらず、八戒の腕のなかではすやすやと穏やかな寝息をつくハル。彼女の表情はここへ来て一番晴れた表情に見えた。







その言葉ひとことで










 

mae ato
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