05

 




「ちゅ…ちゅーって…///」

「どもんな」


ハルの言葉に驚きを露にする四人。悟空に関しては縁のない言葉に思わず吃り悟浄に後頭部を叩かれる。



『ちゅーってキスのことだよ?知らないの?』

首をかしげる少女にさすがに困惑する四人に説明するために口を挟むリク。


「ハルって口から火が出せるんだ、怪獣みたいに…それでキスしたら自分の口と相手の口が繋がるだろ?そこから火を吹き込まれたら……相手は堪らず中からイッちゃうわけ」



"キス"という単語に惑わされていた彼らだがリクが話終えるに近づくと思わず顔を青くする。三蔵や八戒までも表情を歪めていた。


『これは一撃必殺なのだ!あたしキスしたら絶対相手を殺せる自信あるよっ』



ただの少女が発した言葉なら凄い大胆発言に男は沸くかもしれないが、リクの話を聞いた後ではいくら悟浄でも冷や汗を流す。

にっと笑う少女の片割れはそんな紅い髪の男に近づき一言。




「つーことで、ハルに手ェ出したら俺が手をくだすまでもなく死んじゃうからv」


同じように見える笑みだが背後に纏うオーラが全く違い黒ずんで見える。


「はは…気をつけマース」



思わず苦笑する悟浄に満足気に微笑むリク。ハルは不思議そうに首をかしげるが途端急かすように三蔵の袖を引っ張る。




『早くお城に行って悪いやつやっつけなきゃ!』

「……ンなすぐ着くような場所じゃねぇよ」

呆れながらもハルの頭を小突くとジープに乗り込む。続いて八戒、悟浄、悟空と乗り込んだ。



「ハル」

『ラジャー』


元気に返事をするハルは両手を前に構えるとぶつぶつと呪文を唱え始める。

現れる物体に四人が目を凝らしていると徐々に形が分かってきた。それは4人乗りジープより少し小さいサイズの、しかし獣にしては大きい虎のような生き物が現れた。ふわふわの毛は炎のように紅く、鋭い瞳は森のように深い緑だ。




『よっと…』

「行こーぜ!」


それにまたがり何食わぬ顔で先を行く双子に四人は感心した声を上げながら発進した。


「あれスゲー」

「何なわけ?ペット?」

「使い魔ですよ」

「…なんでおまえはそんな詳しい」

「二人から聞いてましたからv」

「「「……………」」」




――三蔵一行の長い長い旅路が始まった







五百年前のあの時から








 

mae ato
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テーマ「人外ファンタジー」
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