07
「おまえらと一緒にすんなよ、俺たちわりとこいつら気に入ってンだよね」
『それに"低俗で無力な人間なんぞ"ってとこカッチーンきた!』
双子は揃って手にした武器を蜘蛛に向けると妖しくニッと笑みを浮かべる。
「どうする?」
『あたしらが"低俗で無力な人間"か…』
「『試してみる?』」
「このおろかなガキどもが!!おまえらから先に喰ってあげるわ!」
二人の挑発に乗った蜘蛛は迷わず双子を狙って攻撃を始めた。それを見た三蔵は双肩に掛けた経文に手をかけると三人に指示をだす。
「八戒は朋茗達を頼む。悟空と悟浄は少し時間をかせげ、あいつらに任せたらここが破壊されちまう……俺が奴の動きを封じる」
「確かにな…」
口を開けて笑う悟浄は勢いよく飛び出した悟空の背中を追いかける。巨大蜘蛛を小馬鹿にするかのようにその巨体の周りをちょろちょろする双子に二人は合流する。
その間にも三蔵は経を唱え彼の周りでは経文が宙を舞っていた。
「貴方達は一体…?」
朋茗は側に寄ってきた八戒に問う。
「話すと長くなりますが、妖怪の暴走には原因があるんです。どうか忘れないで下さい…種族の違いに隔てなどないことを」
朋茗は思わず見とれてしまう。その優しくて悲しい深い緑の瞳に――
「ロ奄嘛咤叭ロ迷吽!!――魔戒天浄」
三蔵の声と共に飛び出した経文が蜘蛛の動きを封じる。
「とどめぶちかましてこい、悟空!」
「っしゃあ!!」
高く飛び上がると蜘蛛の頭に如意棒を突き刺す。強い光の後、蜘蛛の姿は一瞬にして消滅した。
「もう行くのかね」
「ええ、長居するわけにもいきませんし」
その日の明け方
一行は既にジープに乗り込みいざ出発をしようとしていた時だった。
「迷惑かけてすみませんでした」
「大丈夫さ。さして損害もひどくはないしな」
丁寧に謝るリクの頭を撫でながら優しく笑う朋茗の父。
「"あんた達ならこの壊れかけた世界をなんとかできる"そう感じたんだが……違うかね?」
一行を見渡す彼に三蔵は鼻で笑うと一言で返す。
「"借り"は返す主義だ」
―――ガチャ
丁度出てきた朋茗は悟空の前に四角い包みを差し出し
「お弁当…作ったんです。あの…良かったら皆さんで……」
「おう、さんきゅ!」
にっと笑いかける悟空を見て双子はハルの出した神獣へまたがる。
「それじゃこれで」
それを見た八戒が朋茗達に別れを告げると一行は前へ進み出した。朋茗の謝罪と感謝のこもった弁当を持って…。
「やはり直接的な刺客が送り込まれてきたか」
「牛魔王の蘇生、紅孩児という人物…今のところ謎の部分が多すぎますが、事は思った以上に大きいようですね」
「そうだな…だがそれ以前に」
真剣に話す三蔵と八戒の後ろでは朋茗の作った弁当にがっつく二人。相変わらずぎゃあぎゃあ叫びながら喧嘩をもしている。
「後ろのバカどもはどーにかならんのか?」
「同感です」
『あたしも食べたい!』
「俺も!」
隣を飛ぶ双子も手をあげるがそれを無視してがつがつと手と口を動かす二人。
二人に無視され密かに青筋を浮かべる双子に気づかずジープは走り続けるのだった。
食べ物の恨みは怖いもの