06

 



―――パァン



銃声がしたかと思うと蜘蛛の糸が一瞬ゆるむ。一行と蜘蛛の間を紅い光が通過しその糸は完全に消滅した。

突然のことに驚く一行が入り口に目をやるとよろける朋茗の父が三蔵の銃を手にしている。そのとなりにはリクと、少し怒った様子のハルが背丈ほどの棒をたて巨大蜘蛛を見ていた。


「ハル!リク!」

『なに、やられてンの?こんな虫ごときにッ』

「今までいなかったヤツに言われたかねェよ!!」

「お、俺らは親父さんを助けに行ってたんだよ!」

『あれ?そんな予定だったっけ?場所がわかんな…




―――バシッ



……ッ…た』


ハルの頭を叩くと誤魔化すかのように笑うリク。呆れる三蔵の横では悟浄と悟空がゲラゲラと笑い、八戒が双子に駆け寄った。



「無事で良かった。怪我はないですか?」

「『………え』」

きょとんとする双子は目を丸くして八戒を見上げた。


「どうしまし…」

「…おのれ、ガキごときに…!」


八戒の言葉を遮った巨大蜘蛛は近くにいた仲間の妖怪をギロッと睨み付ける。



次の瞬間――


「見るな!朋茗ッ」



三蔵が彼女の前に立ちその光景を隠すが、既に遅く朋茗の目にはしっかり刻まれてしまった。巨大蜘蛛が仲間の妖怪を喰らう姿が。



『仲間なのに…』

「妖力を取り込んで傷を修復してるんです」

「男を食らう…か。まさに蜘蛛女だな」

ガタガタと震える朋茗は過去を思い出したのか耳を塞ぎポロポロと涙を溢す。




「……い…いやあぁああ!!」

『朋茗!』

「嫌い。大ッ嫌い…!妖怪なんて…妖怪なんて――!死んじゃえばいいんだ!!」

「…ッ…!」

一瞬その言葉に気を取られた悟空が背中に入った蜘蛛の脚によって飛ばされる。


『「悟空!」』

双子が声をかけるなか、悟浄にも脚が攻撃を仕掛けてくる。やがて蜘蛛の標的は朋茗と父に向かってしまった。朋茗を抱きしめる腕に力を入れた時



――ゴト…ゴト…ドォン






蜘蛛の叫び声が響く。

床には3本の脚が転がっており、親子の前には血を流す悟空が二人を庇うように立っていた。そしてその両隣には大きな扇を広げたハルと剣を手にしたリク。


「いー加減にしろよ、テメェら!」

「この二人は関係ねェだろ…」

『……あんたまじ嫌い』



さっまでとは全く違う双子の蘇芳の睨みに怯む蜘蛛女。

「ボ…ボウヤこそ何故そこまで低俗で無力な人間なんぞに味方する!?ボウヤ達だってもとはと言えば…我々と同じ妖怪じゃないか!」


朋茗が息を飲む音が双子のもとまでも聞こえてくる。きっと彼女は今信じられないような表情で悟空の背中を見詰めているだろうことは容易に感じられた。



「…るせーや。人間だとか妖怪だとか、そーゆーちっちぇえことはどーでもいいんだよッ!ただ飯がうまかったんだ、そんだけ!」


真っ直ぐな瞳をした悟空の言葉に双子は顔を見合わせる。数秒後には沈黙を破るかのようにけらけらと笑いだす双子に朋茗は驚いて目をやった。






 

mae ato
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