05
その頃――
三蔵の部屋には蜘蛛のように糸を操る女の妖怪が朋茗を人質に、最高僧たる"三蔵"の称号を持つ者を食べれば不老不死をもたらしてくれると話していた。身動きの取れない三蔵のあごをくいっと持ち上げる。
「近くで見るとキレイな顔してるじゃない…美味しそうだわ、ボウヤ」
「……、近くで見るとシワまみれだな、クソババア」
―――ガッ
勢いよく頭を床に叩きつけられさすがの三蔵も呻き声をあげた。
「調理法が決まったわ!ミンチにしてあげる、見るカゲもないくらいズタズタに引き裂いて…」
――ザシュッ
風を切る音と共に二人の間を何かが通った。それはカチンと音をたて持ち主の元へと戻る。
「やめとけやめとけ、そんなボーズ」
「硬ーし、生臭ーし」
「煮ても焼いても食べられない人ですからv」
いつの間にか扉は開いておりそこに悟空、悟浄、八戒が立っていた。
「余計なお世話だ」
ペッと血を吐き捨てながら呟く三蔵はあることに気づく。
「…あいつらはどうした」
言わずもがな双子のことだが八戒たちも辺りを見回し「先に来てると思ったんですが」と答えるだけ。
人質として捕られていた朋茗を難なく取り返した八戒。
「ゲームは互角(イーブン)でなきゃ」
にこりとした笑みを見た蜘蛛女が悔しそうに指笛を鳴らすと、彼女の手下がわらわらと集まる。
「殺っておしまい、下僕達!」
襲いかかってくる妖怪を軽々と倒していく悟空、悟浄、八戒。そんな中、三蔵は迷わず蜘蛛女の頬を殴り飛ばす。
「さっきはどーも…利息は高いぞ」
「…おナメじゃないよ、タレ目のボウヤ」
ニヤリと笑う女はそのまま凄まじい音をたてながら形を変えていく。徐々に巨大化していくからだに一行は離れ様子を窺う。
その姿はまさに蜘蛛そのもので、一行の目の前には巨大な一匹の蜘蛛が現れていた。
「うわー…マズそう!」
「いいね、オマエ。そーゆー思考回路で」
それでも呑気に話していた彼らにさっきまでより強度の上がった糸が絡まる。なんとか脱出しようとする悟空だがいくらもがいても自由になれることはない。
そんなときにタイミング悪く八戒に抱かれていた朋茗が目を覚ます。
「いやぁあぁ!!」
巨大蜘蛛を見て声をあげる彼女を安心させようと微笑む八戒だが首元に糸が絡まり息が出来なくなってしまった。
「く……ッ!」
「きゃあぁあ!八戒さん!!」