04

 







「…貴様らはどこから来た」


コクコクとミルクを飲むハルを横目に金髪の男はその片割れに声をかける。リクは少し悩んだあと、一言。




「異世界」

「………一体何者だ」

「"何者"って……あんたとおんなじ人間だよ。」


金髪の男の問いに淡々と答えるリクを見て紅い髪の男がその片割れに近づいた。







「あれマジなわけ?」


カップを両手で持ったままのハルは少しの間黙っていたが、顔をあげて紅い髪の男をじっと見詰める。



『…あたし知らない人とはしゃべっちゃダメって言われてるの……母様に』





「………………は?」


思いもよらないことを言われた紅い髪の男は困ったように髪をかきあげた。



「八戒と猿はいいのになんで俺はイケねぇの?」

『……名前知らないもん』


ぷいっとわざとらしくそっぽを向くハルを見て、苦笑すると目線を合わせるよう屈み彼女の頭をがしがしと撫でる。




「俺ァ沙悟浄だ」

『さご?』

「悟浄!…よろしくな、ちびっこ」

にっと笑った紅い髪の男、悟浄につられるように笑みを浮かべたハル。




「おっ」


短く声を上げた彼を不思議に思っていると、突然がばっと抱きつかれる。驚きのあまりぽけっとするハルの頭を悟浄はこれでもかというぐらいにぐしゃぐしゃとなで回し始めた。




「おまえ激カワイイなぁ!!」

『"激"?』


されるがままの片割れに気づいたリクは慌ててハルを引き寄せるとぎゃあぎゃあ騒ぎだす。



「テメェ、ハルに手ェ出してんじゃねぇよっ!!」

「バカゆーな!まだ、出してねぇよっ」

「まだってなんだよ!出す気だったんだろうがっ」

「俺ァ、ロリコンじゃねぇんだよ!」


リクの腕の中できょとんとするしかないハルはふと金髪の男を見た。

紫色の垂れた瞳は真っ直ぐに自分を見詰めていて、交わった視線は安易にそらせない。すると目の前に悟空がまるで二人の間を隔てるように入ってきた。



「おまえらさっ、異世界から来たんなら行くとこねぇんだろ?オレらと一緒に住めばいいじゃん。」


突拍子もない発言にリクと悟浄の言い争いもピタリと止まる。


「「「『………は?』」」」

『ちょっと…待ってよ』

「確かに行くとこはねぇけど俺らは…」

「なんだよ!いいじゃん、オレの住んでる寺めちゃくちゃ広いんだぜっ!なっ、サンゾー」





――バシィッ


にっと笑って振り向く悟空はどこからか取り出されたハリセンによって思い切り頭を叩かれる。

「てめぇは勝手に話進めてんじゃねぇよッ」


ハリセンを片手に怒鳴るのはさっきまで黙っていた金髪の男、三蔵。さすがの八戒も困ったように笑い、悟浄は素知らぬふりしてタバコをくわえていた。

「こんな得体も知れねェ奴ら寺院に置けるわけ…」

「『……?』」


ピタリと止まった三蔵に双子は不思議そうに首をかしげる。三蔵の視線が金瞳の少年に向いていることに気づいた八戒はにこりと微笑むと双子の頭を撫でる。


「得体が知れないから寺院で保護するという形にすればいいじゃないですか」

「イー案じゃん、そーしろよ。あの猿がいればちびが何人増えようが関係ねぇだろッ」


けらけら笑う悟浄に三蔵は青筋を浮かべ睨み付ける。

「てめぇ関係ねぇからンな勝手なことを…ッ」


『あのさ…あたしらの言い分は無視なわけ?』


三蔵の言葉を遮るようにむすっとしながらも問うハル。何かを確認するかのようにハルの頭から足の先まで眺める三蔵に悟浄がニヤニヤしながら言う。



「何々?三蔵様ってばこんなちびちゃんにモエ〜ってか?」




―――ガゥンガゥン


口許をひくつかせる悟浄の後ろの壁には煙を出す穴が2つ出来ていた。じっとハルを見る三蔵におもしろくないのがリクで。



「おい、なんとか言えよっ!」

きゃんきゃん騒ぎだすリクに三蔵は短く声を発する。


「…あの力はなんだ」

「『……は?』」

「貴様がさっきあのバカに向けて放ったものだ」

『……あぁ』

思い出したハルは眉をしかめて目の前に立つ金髪の男を見上げた。



『魔法知らないの?』

「さも当たり前のように言ってんじゃねぇよ!」

『痛い痛いっ!!』


三蔵にぎりぎりと力強く頭を掴まれ声をあげると慌てて止めに入るリク。そんな光景に呆れてため息をつく八戒だった。







 

mae ato
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