『もっと…自由に……っ…』


うつむく彼女は膝の上にぽたぽたと小さな水溜まりを作る。

『好きなように…生きて…っ』

「なつめ」

紅野の凛とした声にゆっくり顔をあげると真っ直ぐになつめを見詰めていた。



「俺は好きであの子の側にいるんだ…俺はもう自由に生きてる。……だから君達を裏切った俺なんかのために


…なつめが泣かないで」



すっとなつめの頬を撫でる紅野は悲しそうに微笑んでいた。


今紅野を悲しくさせてるのは…







―――自分




なつめは手の甲で目元をごしごしと擦るとにっと笑ってみせる。


『ご、ごめんね!あたし今日泣いてばっかだな…あははっ』

「…学校で何かあったの?」


心配そうに聞く紅野に嬉しそうななつめは可愛らしくはにかんだ。




『みんなと会えてよかったって思った!』


そんななつめを驚いたように見ていた紅野だが、すっと口角をあげると「そっか」と呟いた。




「なつめちゃん…っ」

『……この声…!!』


本家からの帰り前方からの声に顔をあげると笑顔を浮かべる杞紗が駆けて来た。



『さ…さっちゃん!』

そのまま少女を抱きしめるなつめ。


「…私ね、自分を好きになる」

まだぎこちなく話す杞紗になつめは柔らかく微笑む。



『…うん』

「なつめちゃんやお姉ちゃんが…"大好き"って言ってくれて……嬉しかったの」


ぎゅっと抱きしめると杞紗は嬉しそうに笑った。



それからなつめは杞紗の後ろにいた由希とみんなで透のバイト先へ迎えに行った。

























「ユキもくればよかったのにねぇ」

「自分もやんなきゃいけない事あるって」


学校へ行く、と言った杞紗をみんなで見送り自分達の学校へ行く。



『(…頑張れさっちゃん!)』





急に強くなれた訳じゃないし



何かが変わった訳でもない



まだ震える体………だけど



立ち向かっていこう?




『よし!透君行こっ!ほら、春も紅葉も行くよー!』




大切なのは…






弱さ故の向上心






 


: →


 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -