「なつめ…どうしたの?」

『いや特に用事はないけどみんなしていないから…うん……あはは』

由希の問いにどこか無理して笑うなつめ。



「「………」」

由希と撥春はすっと立ち上がると二人揃ってなつめの前へと立つ。


『どっ…どうしたの?』

突然のことに少し後ずさるなつめ。彼らの後ろにはまだ少し涙目の紅葉とほろほろと涙を流す透の姿。



『え…なんで透君泣いてんの!?どうしたの…っ?だいじょー……』

「なつめ……」

遮るように彼女の名前を呼ぶ撥春。


『…………な、なに?』


「…なつめっていつも人のことばっかり」



撥春は彼女の頭をぽんぽんっと撫でると呆れたように、しかし優しく微笑む。


「僕らはいなくなったりしないよ…絶対」

肩に手をかけ横からのぞき込むようにする由希の言葉になつめの蒼い大きな瞳が揺れる。



「言ったでしょ!僕もいるんだよっ!!」


正面から彼女に抱きつくのは太陽のように笑う紅葉。



『み…みんなしてどうしたの…っ?』

混乱するなつめの右手を透は優しく包み込む。


「私も…っ…なつめさんが大好きです…っ」

『………透君…っ…』

『な…なんだよぉー……みんなして…ぅ…っ……』


堪えきれない滴はなつめの白い頬をぽろぽろと流れる。



『…ぅ…っ……』

「……なつめはさ、もう少し自分を大事にしなよ」


優しく微笑みながら彼女の頬に触れる撥春。

どうしてこんなことになっているのかわけのわからないなつめは、涙を流しながらきょとんと彼を見上げる。




――キーンコーン


「あ…ホラ授業始まるよ」

「由希…今日俺先生ン家行く……杞紗見たいし渡すモンもあるし」

「渡す物?」

片手でさっと手紙を出しながら「手紙。」と答えた彼は、もう一度なつめの頭を撫でると背を向け歩き出す。もちろん紅葉も後をついていった。




「……弱い事がいい事なんて思わないけど…強ければいいとも思わないんだ。…社会は弱肉強食ってたまにいうけど俺達は動物じゃなくて人間だよ…」


真っ直ぐ前を見据える由希の言葉に、まだ目尻に涙を溜めたままのなつめと透はそっと微笑む。



『……うんっ』

「はい…っ」

そんな彼女達の笑みに由希も表情を緩ませた。


「…うん……勇気でた」

そんな彼に不思議そうに顔を見合わせる二人だった。







 


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