「いつまでもしーちゃん家に居る訳にはいかない……んだよね…これからどうするのかなぁ、キサ……」


昼休み

屋上で昼食をとる四人。由希と紅葉、撥春そして透だ。


「…今頃考えてんじゃないの?…根がマジメな分考えなくていい事も考えそうだけど。…だからこそあそこまで自分おいつめちゃったんだろうけど…」



撥春の言葉に由希は黙り込んでいたがいずれそっと口を開いた。

「それにしても何が"理由"でイジメられてるのかな…」


なんだっけと首をかしげる撥春に紅葉が呟くように話し出す。

「ボク知ってるよ…」




「あのね最初はね"見た目"だったって…髪とか目とかそういうの。…変な風に皆の気に障ったって」

撥春が自分のだったらなぐり飛ばす、夾だったら半殺しと話している間も紅葉は寂しそうにうつむく。


「キサもがんばったんだって……この色は仕方ないんだよって。……そしたら今度は皆から無視されるようになっちゃったんだって。でねそうやって無視するのにキサが何か言うと笑うんだって…」

紅葉の言葉にそれぞれ考えその場面を想像する。


「ボク…クラスでそういうのってされた事ないの。…だから想像するしかできないけど想像してみたの。ボクが何か言う度にクスクス笑われたらどんな気持ちになるだろうって」



目を閉じて考える紅葉。次に開いたときにはその瞳からぽろぽろと涙がこぼれ出す。



「……それはとっても…かなしい気持ちなの…」

「……なつめも…頑張ったんだ…」

ぽつりと呟く由希の言葉に涙を溢しながらも首をかしげる透。

「ああ…本田さんは知らないんだね」

「…なつめも同じ」

簡潔に告げる撥春にわけが分からないというように由希を見る透。



「…なつめもイジメられてたんだよ」

「……え」

由希は少し言いづらそうにうつむく。


「なつめのママも僕のママとおんなじで記憶を隠蔽しちゃったんだ」

寂しそうに笑う紅葉の頬には依然として涙が伝う。

「どうし…て…」

「なつめを大事にしてたんだよ?…けど苦しかったんだろうね……最後は何度も謝ってたって…"物の怪つきに産んでごめんね"……って」


ぽろぽろと涙をこぼす紅葉の頬を撥春が右手で優しく拭う。

「…大人は勝手だ……勝手に子供を不幸と決めつけて一人で逃げようとする……」

「春…」




じっと前を見据える撥春に由希が声をかけた次の瞬間。

『あ、いたいた!みんな探したよー』

何も知らないなつめが冷たい静かな空間を、いつものようにほわほわした空気に作り替える。






 


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