杞紗が居候を始めて三日



――ガチャ




『…さっちゃん……ちょっと恥ずかしいんだけどな』

トイレから出てきたなつめに駆け寄る杞紗に苦笑するがきゅっと裾を掴まれてなつめの理性はふっ飛ぶ。



『可愛いっ!大好き!!///』


思わず抱きしめるなつめを見た夾は少しおもしろくなさそうだ。



「おい…腹減った」

「はい、ただいま!杞紗さん今夜は何を食べましょうねっ?」


しかし杞紗は何も言わずにうつむくだけ。

「あ…っ」

「…杞紗ぁ、おまえ自分の食いたいモンも言えねぇのか?」


申し訳なさそうに眉を下げる透と、本人は自覚がないだろうが冷たく言い放つ夾。そんな彼にのしかかる紫呉はにっこりと微笑みながらうつむく彼女の頭を撫でる。



「はいはいっ!バカで間抜けで押しに弱い夾君の言う事なんてケ・セラ・セラだよ、さっちゃんv」

「…おい……っ」


なんとか身ぶり手振りで説明しようとする杞紗を一生懸命見詰める透。

「あっ…少しお待ちください!」

「『……?』」




戻ってきた透の手には紙とペンが握られていた。

「アミダクジでーすっ」

「アミダで決めるんだね?」

なるほどと感心する紫呉の横で嬉しそうに手をあげるなつめ。



『はいはーい!あたしにメニュー書かせてっ』

「はいっ!」

さらさらと文字を書くと杞紗の前に差し出す。


「では、杞紗さん!お好きな場所を指して下さいっ」

杞紗の指した場所からおかしな歌を歌いながら進んでいく透の指。


「はい!決定しましたっ!今夜は……ニラ玉です!」

「……おいっ…なつめ。」

『んー?』

どうゆうことだ、と目で訴える夾を素知らぬ顔して眺めるなつめ。


「てめっ…わざとか!?」

『何のこと〜?』



けらけら笑い出すなつめを叫びながら追いかける夾。そんな彼らをきょとんと不思議そうに眺めていた杞紗だったが、二人のやり取りに声を出さずとも一人微笑んだ。





 


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