由希と夾は鼠と猫の姿のまま二人にちょこちょこと近寄るとばつが悪そうにする。


「なつめ…落ちる前に何か言ってたけど…」

ただ調子が悪かっただけ…と呟く彼らに透はくすりと微笑み安心したように二人を見詰める。


『…そっか』

なつめはそう呟いたきり立ち上がろうともせず、彼らの服を集める透をじっと眺めていた。





―――ポンッ


元に戻った二人が服を着る。



「今日はもう帰ろうか…」

「…湖は明日にしようぜ」


さっさと立ち上がる由希と夾に透は元気にうなずく。




が……



「なつめ?」

「…そんな湖行きてぇのか?」


依然として立ち上がろうともせずじっとうつむくなつめ。



『あはは…先帰ってて…』

いつもより引きつった笑顔を浮かべ告げるなつめを置いて彼らが帰る訳もなく…。


「んだよ…どうした?」


夾は困ったように頭をがしがしと掻き、由希はじっと彼女を見詰める。すると呆れたように微笑みなつめのもとへ歩み寄ると彼女に背を向けそっとしゃがみこむ。




『…え』


「ほら…」

『…ゆんちゃん?』

きょとんと由希の背を見るなつめに彼は小さくため息をつくと、少し振り返り優しく微笑む。



「乗りなよ?痛いんでしょ、足」

『………気づいてたんだ』

由希の言葉に恥ずかしいのかうつむき照れ笑いを浮かべる。


「ほら」

少しの間の後、由希の背にそっと乗るなつめ。



「…ちっ、んだよ」


夾は一人おもしろくなさそうにさっさと帰っていく。



『…ごめん…なさい』

「どうして?」

『……迷惑…かけちゃって』


耳元で呟くなつめに本日何度目かのため息をこぼす由希。



「迷惑なんかじゃない、黙っていられた方が迷惑。」

『……ごめんなさい』


しょぼんと落ち込むなつめに「第一…」と続ける。

「俺はなつめに関して迷惑だなんて思ったことなんてない、勘違いしないで。」



そう言った由希の耳はほんのり赤くなつめはつい吹き出してしまった。











君はわかってない







 


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