「なつめ…よく聞いてくれ……」

『……………ん』

「父さんは草摩を出る…けどおまえは物の怪つきだ……ここから出ることは出来ないだろう…」

『…………ん』


父親の言葉に小さくうなずくなつめは魂の抜けた脱け殻のようだ。




「楽羅ちゃんが…いるだろう?道場の…」

『…うん』

「そこで……お世話になりなさい…」


『……お母さんは?』




なんとか一命をとりとめたなつめの母親は今はとりの父に見てもらっている。






「…………よく聞きなさい。」





最初の言葉を再び口にする父親に大事な話なんだと察するなつめはじっと父親を見上げる。


『……はい』




「お母さんは…おまえの……なつめの近くじゃもう生きていけないんだ……」

『…………』

「でもな…なつめのことを忘れられたら…前みたいに優しい彼女に戻る……」

『あたしのこと…忘れちゃうの?』


"忘れる"という言葉にはっと顔を上げるなつめの頭をくしゃっと撫でる。






「……元気に…してやって……くれないか?」


『……っ…お父さん…』



初めて見る父親の涙に少女も綺麗な蒼い瞳を潤ませる。



『お母さんが……幸せに…なれる…なら』









幼い少女の決断







 


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