「じゃバイバイっ」


「「「は!?」」」

すくっと立ち上がる綾女に思わず声を上げる由希と夾と透。けらけらと笑うのはなつめだった。



「とりさん歩きで来たのかい?」

「いや…下に車が付けてある」

「お詫びにボクが運転しようっ」

突然帰ると言い出した綾女についていけない夾たちは、再びぎゃあぎゃあ文句を言い始める。


「なんなんだ!一体突然っ」

「そうかい名残おしいかい?でもとりさんが迎えに来たなら帰らねば………由希!」

早口に捲し立てるとさっと由希の前に立つ。

「なにやら騒がしくてゆっくり話すヒマもなかったね…だが案ずるなまた来るさ…愛しい我が弟っ」

「(自分で騒がしくしてたんじゃないか…っ)」

「ではとりさん行くとしようっぐれさんまたいずれっ」

「うん、またソッチに遊びに行くよ」



部屋を出る間際なつめを見詰める綾女に彼女はいつもの笑みをかえす。


「サラバだ諸君!!」

廊下を歩く音と綾女の笑い声は徐々に遠ざかり、やがてドアが閉まる音と同時に消えた。







「なん…だったんだ…」

『あーやはハリィの言うことだけはよくきくんだってさぁ』

ぐったりと疲れている夾に笑顔で答えるなつめ。


「そうなのですか!?なぜでしょう?」

「憧れなんだって」

夾同様疲れていた由希はすっと顔を上げる。



「自分には無くて欲しいと思っているものをはーさんは持ってるから憧れて…大切にしたいんだって」


紫呉の話に思わず口元が緩んでしまうなつめは、そっと由希を見る。



「昔マジメな顔して話してくれた事があるよ…まあ好きって事だね、単純に言えば…」

由希はじっとどこか一点を見詰めて何かを考えている。


「……それで結果的にははとりが世話係になっちまった訳か?」

「うんまあねっそうとも言うっ」




 


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