「まったく今回は由希が誤魔化してくれたからよかったが。」

「色気だましはあいつの趣味だよ、ぜってー!」

はとりの言葉に馬鹿にしたように笑う夾。


「何だかんだ言ってけっこう女顔の自分が好きなん…」





―――バコッ



夾の声は高く殴り飛ばされることによって遮られた。もちろん由希に。


「もっと高くとばしてやろうか…」

「くそ鼠……っ」



鼻血をおさえる夾になつめはちょこちょこと近づくと座り込む夾の足にすり寄る。

「…大丈夫だって」

『……うん、知ってる』





二人(?)の正面ではウサギになった紅葉を由希とはとりが叱っているところだった。


「ああ…と肝心な事を忘れるところだった」

はとりは思い出したように由希と夾、そしてなつめにそこへ並ぶように声をかける。まだライオン姿のなつめは由希の肩に前足をかけてぶら下がっていた。


「何?」

『どうしたの?』

「俺の質問に簡潔に答えるんだ…1たす1は?」

「「『2?』」」



―――パシャ





その瞬間はとりが取り出したカメラのフラッシュによって辺りが明るく照らされた。

「慊人に写真をとってこいと言われていたものでな。」

じゃあなと紅葉を抱えて屋上を出ていくはとりを怒り狂ったように追う夾。


『最悪……変身したことばれちゃうじゃんか…ι』

伏せたまま前足で器用に頭を抱える白い子ライオンの様子は可愛らしくて由希も透も見惚れていると…。







―――ポンッ




『あ、戻った』


突然姿の戻ったなつめに見惚れていた二人は一気に顔を紅潮させる。

「わぁー///ちょっ…なつめ!服っ…早く着て!!////」

「こっ…これを!///なつめさんの制服です!!」


慌てる二人とは裏腹にのんびりマイペースに服を着だすなつめに二人の心臓はバクバクだ。



『最悪だぁーιあの写真慊人が見たら後から何を言われるか…』

なつめの言葉にハッとした由希は同じように項垂れた。理由はもちろん女装をした姿だったため。


―――バッ





由希は屋上とも構わずにフリフリドレスをおもむろに脱ぎ始めた。


「草摩君!!カゼひきますっ///」



慌てる透に動きを止める由希。由希の髪に服が引っ掛かっていることに気づいたなつめはゆっくり近づきそっと手を伸ばす。

「男が可愛いって言われても嬉しくない…」


そう呟く由希に透は目をそらしながらごめんなさいと謝る。


「本田さんにも、…なつめにも見られたくなかったよ。」

『あたしはゆんちゃんの新しい一面見れて嬉しかったよ?』

にっといたずらに笑うなつめに由希はふいっと目をそらす。



『それにね、可愛いって言われると何だか好きだよって言われてるみたいで嬉しくない?』

「私もお母さんに言われたらとても嬉しかったですよ。」

それは嬉しそうに話す透になつめは複雑そうに微笑む。


「だから皆も草摩君が"好き"という意味で…あれ、なんかこれでは自己弁護ですね…ι」



クスッと微笑む由希を見たなつめは安心したようににっこりと笑う。




『この服可愛いけど着るのも脱ぐのも大変だねぇ』

「なつめが着たら絶対似合うと思う。」

由希はそんなことないよーと笑う彼女の手をそっと握る。





「可愛いよ。」


『え?』

「なつめなら絶対可愛い。」


由希の王子様のような笑顔に透はぐっと胸を射ぬかれたが、当の本人なつめはけろっとしていてまたまたぁーと笑っていた。



「(可愛い=好きって意味じゃなかったのかな?)」


なつめの変化のない反応に頭に疑問符を抱く由希と



「(今のは遠回しの告白だったのでしょうか?////)」



と第三者の立場にも関わらずどきどきしている透。


『あっ…取れたよ!戻ろっか』

綺麗に笑うなつめに二人まで笑顔にさせられる。



『夾ちゃんカメラ取り返せたかな?』

「……無理だろうね」

「あはは…ι」






鈍感な君






 


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