あっという間に文化祭当日
『すっごい、売れてるねぇ』
"オニギリ亭"を営む教室の隅で透の作ったオニギリを頬張るなつめと夾。
「まあ、美味いし…あれがいるからな…」
くくっと笑いだす夾の視線の先にはフリフリのロングワンピを身に纏った由希の姿。
『ありゃ似合ってるねぇ』
「いいザマだぜ!クソ由希」
けらけら笑う夾から再び由希に視線を送ると見覚えのある姿が由希の肩に飛び乗っていた。
「ユキ、メートヒェン(女の子)みたいだっ!」
金髪可愛らしい男の子は草摩の人間で夾は驚きの声をもらすとそれに透は知り合いかと訊ねた。
「紅葉、ひとりで勝手にウロウロするんじゃない」
しかしその言葉を遮る落ち着いた声にその場にいた人間の視線は金髪の少年からその声の主へと移る。
「よう…元気そうだな由希、夾も………なつめも…久しぶりだな」
「は……」
「「きゃーー!!/////」」
由希の声は女子たちの黄色い声に難なくかき消される。それに答えるように金髪の少年―紅葉が名乗りなつめたちとは親戚だと教える。
驚く透に肯定の意を示す夾の隣では隠れるように夾のそばに立つなつめの姿。暴れだす紅葉を放って由希に言葉をかける男――はとり。
二人が何の話をしているのか気にはなったがみんなに迷惑をかけている紅葉を止めるためなつめと夾は先に止めに入った透追った。
「てめぇはココでジッとしてろ!!」
「うあーん!夾がぶったぁっ」
暴れる紅葉を捕まえた夾はとりあえずカーテンで仕切られた場所に連れてきていた。
『殴っちゃだめだよ』
そう言って紅葉の頭を撫でるなつめ。そこへ心配そうに透がやってきた。
「夾君…なつめさん」
透に気づいた紅葉はコロッと表情を変え元気に話し出す。どうやら二人は知り合いのようだった。
「ねっねっトールっ!トールは十二支のこと知ってるんだよねっ」
「あ、はい」
「じゃあ思いっきり抱きついていいんだね!!」
嬉しそうに抱きつこうとする紅葉の頭をガシッと掴んで止める夾。透は紅葉が十二支ということに感激しているらしく二人の会話は耳に入ってこないようだった。
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