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私はとても駄目な人間だ。どれくらい駄目かというと鳥なのに飛べないペンギンとかニワトリぐらい駄目。でもペンギンは泳げるし、ニワトリはおいしい卵を産める。私は何も、何もできない駄目な人間。鳥だったらもしかしたら飛んで何処か遠くにいけたのかもしれないけど私は人間だった。そんな何にもできない私だけど唯一誇りに思うことがある。それは私が白ひげ海賊団の一員であるということ。弱いから戦闘では一切役に立たないし、かといってナースのお姉様みたいに医術を持ち合わせているわけでもないし、料理ができるわけでもないし、洗濯や掃除すら満足にできない。だけど私は白ひげ海賊団の一員だった。笑っちゃうでしょ。私だってどうして今まで捨てられずにこうして海賊やれてるのか不思議なぐらいだもの。1度親父に何にも役に立たない私がここにいてもいいのかと聞いたが親父はいるだけでお前は充分に役に立ってると言って豪快に笑ったのだ。ただ私にはその意味をわかりかねた。
「どうした?暗い顔して」
「あ、エースさん」
私が1人で不寝番についていると梯子をエースさんが上ってきた。
「マルコがナマエ1人じゃ危なかっしいからって」
「そうですか」
マルコさんもエースさんもいつも私を助けてくれた。別に自分の隊じゃない私をいつもいつも助けてくれた。正直この2人がいなければ私はきっと戦闘で命をおとしていたことだろう。だからこの2人には特別感謝している。もちろん他の人にもすごく感謝しているがこの2人は特別だった。さらにエースさんは年が近いこともあってさらに特別だった。
「今日は寒いな」
「ですね」
吐く息が白く染まるぐらいにおちた気温。次は冬島だと私が所属している5番隊の誰かが言っていた気がする。
「次は冬島らしいですから」
「へえ…雪だるまつくれっかなあ」
少し鼻を赤く染めながら楽しそうにエースさんは笑った。なんか好きだな私、エースさんの笑顔。
「私エースさんのこと好きです」
「なっ…!な、な何言ってんだよ!!」
「え、あ、すいません…」
なんか私変なこと言ったかな。
それからしばらくエースさんは黙っていた。
どんどん気温がおちていく。手の感覚が麻痺する。
手を口元にやり吐息で手を温める。すると誰かの手が重なった。それは紛れも無くエースさんの手だった。
「手、冷てえな」
「エースさんの手、温かいです」
私よりも遥かに大きい手が私の手を包み私の手はみるみる温度を取り戻す。
「……俺も、俺もなナマエのこと好きだ」
ふんわり照れたように笑うエースさんは今まで私が見てきたどんなエースさんよりもかっこよくて大人に見えた。
「ありがとうございます」
ちょっとドキドキした。嬉しかった。私エースさんに好かれてるんだ。こんな駄目な私を好いてくれる人がいるんだ。それが何よりも有り難くて嬉しかった。
「ナマエ…」
「なんですかエースさ」
ふわっとエースさんの匂いに包まれたと思うと私の目の前にはエースさんの顔があって唇には何かが触れていた。
私はエースさんに抱きしめられていた。キスされていた。思考がうまくついていかなくてただどうすることもできず瞬きすることすら忘れていた。
気づけばエースさんの顔は離れていた。
「ナマエ?あ、俺…ごめん!いきなりすぎるよな…」
どうしてエースさんに謝られているのかそれさえも今の私にはわからない。
ただエースさんの大きな手が私の頬に伸びてきて優しく何かを拭った。一瞬雨でも降り出したのかと思ったがそうではないようだ。私があまりにも瞬きをするのを忘れていたため目から涙が溢れていたのだ。
「エースさん、私悲しくて泣いてるわけじゃないんです。あの、瞬きするのを忘れてたんです」
そう言えばエースさんは安心したように1つ溜息をつく。
「なんだ、よかった…」
再び触れ合う唇と唇。さっきはビックリしすぎて思考が伴わなかったけど、私エースさんにこういうことされて嫌じゃない。むしろ嬉しい、ドキドキする。ああこれが俗に言う恋というものなのかしら。
唇が離れた瞬間に私はいましがた気づいた恋心をエースさんに告白する。
「私エースさんが好きです。とってもとっても大好きです。私何にもいいとこない駄目な人間です。それでも好きでいていいですか?」
自分の胸の内を全部告白すればエースさんはやや首を傾げたがすぐに笑顔になった。
「当たり前だろ。俺たちもう恋人同士なんだから」
「ふぇ?」
いきなりの言葉にまた私の思考回路はショートした。私はいつエースさんと恋人同士になったのだろう。
「あと、」
私が勝手にあたふたしているとエースさんはまた私を優しく抱きしめ凛々しくてそれでいて柔らかい視線を私に向ける。
「これから自分のこと悪く言うの禁止な。お前は俺のなんだから」
柔らかい瞳で笑うエースさんに私もつられて笑う。もういいかないつから恋人同士になったか、なんて。だってエースさんも私のことが好きだってわかったんだもん。
それだけで充分だよ。
私が彼を思い、彼が私を思う。そんな単純な関係で。それだけで私は
水葬
水に葬るは私の私
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