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「すごく似合わないわね、その色」

その顔に恐ろしく不釣り合いなショッキングピンクのカクテルを口元に運ぶローにそう言うとローは微かに笑いグラスに口をつけた。


「まあ、あまり好きな色じゃねぇな」

「でしょうね」

「だけどお前の好きな色だ」

楽しそうに笑うローはそれでいてどこか淋しげで、目を逸らさずにはいられなかった。




「ナマエ、俺…」

言葉を紡ぎだす唇に私は唇を重ねローの言葉を口内で溶かした。



「私、本気じゃないから」

ふふ、と笑いながら冷たく突き放せばローの表情は苦々しいものに変わる。
そのまま彼に背をむけお代を支払い店を出た。頬を温かい何かが伝うのは無視して。



「ナマエ、」

店を出てわずか100mも行かない道のど真ん中、ローに抱き留められる。ああ、なんて馬鹿なことをするのよ。

私たちは道行く人々の視線を浴びながらただそこから動けずにいた。
このままなにもかも取り払って、自分の本能のままにうごけたらどんなに、どんなに。だけど、私はただの女だった。何もできやしない、未知の世界に飛び込む勇気すらない、ただの女だった。

だから、私は言葉を紡がなければいけない。それがいくら自分の意思に反する言葉でも。



「貴方みたいな人好きじゃないの。だから離してくれる?」

ローの温もりを体中で感じながら私は言葉を放つ。


「私、海賊って嫌いなの。低俗で野蛮で、なのにプライドだけはやけに高くて。だからそのプライドずたずたにしてやろうと思ったのよ」

さあ早く私を軽蔑してこのまま捨ててよ。いっそ殺しても構わないから。




「そうか…たしかに俺は海賊だ。だが、俺は低俗ではないとは言っておく。まあプライドは高いけどな」

ぐいっと無理矢理顔をローの方に向かされる。するとローはニヤリと口元を微かに歪めた。



「とてつもなく嘘が下手なお嬢さんだ」


瞬間、反転する世界。私は一瞬事態を理解できず、ローに担がれているということを理解したのは数秒後のことだった。



「ちょっ…!おろしなさい!!」

この華奢な体のどこにこんな力があるのかローは私を担いだまま走っていく。もう街の灯はとても小さくしか見えない。


「言っただろ、俺は海賊だと」

ニヤリ。楽しそうにローは笑う。



「欲しいモノはどんな手を使っても手に入れるんだよ」

なんだか余裕そうに笑うローに一泡ふかせてやりたくて私は最後に捨て台詞をはいた。



「あらそ。じゃあ最後に言っといてあげる。私とローってスッゴく似合わないわ」

「どうしてだ?」

「だって、私今日ショッキングピンクのドレスなんだもの」

ローは声をあげて笑った。初めて声をあげて笑ったのだ。


「そんなもんもう着たくても着られないぞ。お前は俺の仲間になるんだから」



もう返す言葉もない。私はこういう運命なのだと半ば自嘲的に笑い、夢なら醒めないでとゆっくり目を閉じた。






目を開ければ自宅のベッド

(やっぱり夢だったの、)

でも左隣りに見つけた貴方の温もり

夢じゃない貴方の温もりに私はせまりくる別れを想像し涙を流すことしかできなかった




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ありがとうございました

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