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私はどうしようもないくらいこの男を愛していた。毎晩のようにやって来ては体をかさね、そして何事もなかったように去っていく。

そんなこの男を愛していた。




「ねえ、そういえば名前は?」

情事後、服を着てすぐにでていこうとする彼の背中に問い掛けた。


「…トラファルガー・ロー」

彼、もといローは私に向き直った。どうやら今晩はもう少しいてくれるらしい。


「お前は?」

「ミョウジナマエよ」

私の名前を初めて知ったローはまっすぐな瞳で私を見た。
初めて彼に抱かれたのは1ヶ月も前のこと。
互いのことなど全く理解せずに私と彼は関係を持った。そんな関係を拒絶することを私はしなかった。理由はわからないが。




「そうか…初めてお前の名前を聞いたのに初めてな気がしないのはなぜだろうな」

「私も、初めてな気がしないわ」


互いの視線がぶつかる。その瞳からは何も読み取れなかった。



「ねえ…どうして私なの?」
彼に抱かれている間もずっと考えてたどうして私なのだろう、と。



「…わからねえ、自分でもわからねえんだ」
(どうしてお前なのか)



彼の低音が直接脳に響く、ああ心地好い…




「なあ、お前俺とこねえか?どうしてお前だったのか、もう少し一緒いればわかる気がするんだ」

「あら、だったら毎晩ここに来ればいいわ」

「そういうわけにもいかない、俺は明日この島をでる」




「俺は海賊なんだ」


彼の言葉に驚きはなかった。何となくそんな気がしていたから…だけど、差し延べられたこの手を素直にとることができない。







「俺と来い、ナマエ」

名前を呼ばれた瞬間私の中で何かが、弾けた。





「ロー…」

私が彼の手をとった瞬間抱き寄せられ、唇と唇が触れた。




それはとても甘美なものだった。







「ナマエ」


この決断が正しいかどうかなんてわからない、だけどこの温もりだけは信じられる。




おかしな出会いだったけど、そんなの関係ない。だってこの人を


(愛してるカラ)









あなたとならたとえ、地獄でも




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