マルコ隊長の体温は私を安心させた。温かい体温がすごく大好きで、こうやって抱きしめられている時が1番好きだった。
だけど、今は、違う。
早く離れたくてしかたがない。もがけばもがくほどがっちりと拘束されしまいにはもがくことすらできなくなった。
「マルコたい、ちょ…はなし、て」
「離さないよい。絶対に」
耳元で囁かれた言葉に体が反応する。そのまま耳、首、鎖骨とキスがふってくる。私はただ涙を流すことしかできなかった。
そして噛み付くような乱暴なキスをされた。互いの唾液がまざってこのまま溶けてしまうのではないかと少し、怖かった。
「んっ、…」
さらに涙が零れる。マルコ隊長はそんな私を黙って見つめた。私はその視線にたえられなくて顔を背けた。
「ナマエ…」
「もうほっといてください…」
それでもマルコ隊長は腕を解いてくれない。
私は意を決して語りだした。
「私、見ちゃったんですよ…マルコ隊長とセナさんが宿にはいっていく、ところ」
事実を淡々と語る間も終始涙はとまらなかった。
マルコ隊長は腕を解いてそっぽをむいた。マルコ隊長の瞳に私は映っていない。これが、すべての答えなの?嘘だと思いたかった、何もなかったという言葉がほしかった。でも現実はやはり自分の思い通りにはいかない。
気づけば涙はとまっていて、私は暗い場所にひとりきり。
マルコ隊長はいなかった。
恋人ごっこは終わりにしましょう?
もう涙すらでない
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