「信じられるか?」


そう言えば、ベンは煙をくゆらせながら、どうだかな、と呟く。


「嘘を言ってるようには見えねェ。が、信じるには話が突拍子も無さすぎる」

「だよなァ...」


船の欄干。背中を預け、両ひじを置き、空を見上げた。日は傾いているものの、夜はまだ遠い。

あれから、多少はマシになったものの、未だに恐怖に縮こまっていた名前を自分の部屋に送った。念のために、部屋の前に見張りもつけて。


「ま、悪魔の実があるくらいだ。何があってもおかしくないけどなァ」

「だからと言って、相手の話を鵜呑みにする訳にもいかねェだろ」

「そりゃそうだ」


ベンの言葉にははは、と声を出して笑えば、ため息なのか、煙草を吸って吐いただけなのか、長い息が吐かれた。

彼女の話を全面的に信用しているわけではない。だからこそ、部屋に入れて、見張りもつけた。しかし、心のどこかでそれが本当ならば面白いと思う自分も確かにいた。
それほどまでに、彼女の言動や反応は、ただの一般人だったのだ。厳つい男共に囲まれ、手足を縛られた状態ってだけで、少女には恐怖だろう。


「海賊を知らないもんか...?」


ぼそり。それが似合うほどに小さく、息と一緒に呟いたはずだったが、ベンには届いていたのだろう。考え込むように、彼もまた息を吐いた。
あの反応は一般人だ。恐怖に怯えていた。それに嘘は見えなかった。万に一つでも、あれが演技だとすれば相当強かな女だ。
ベンが疑う気持ちもわからないではない。でも、あの反応、彼女の突拍子もない話、そして実際に自分達の常識とも言える知識が通じない事実。どれを取っても、彼女がこの船、船員や自分に害を為すために居るとは思えなかった。


「...もう少し話してみるか!」


うんうん唸って考えてみたものの、やはり行き着く先は敵ではないの一つ。さらに言えば、少しばかり、いやもう少し、彼女に対しての興味がむくむくと湧いてきてしまうのだから仕方ない。
それが声音にも出ていたのだろう、ベンが多少呆れを含んだ視線を寄越したが流しておいた。

向かう先は、彼女の元へ。










(それは新たに見つけた宝のような)














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