あれから、私はシャンクスさんに渡された爪切りで爪を切り、切られた爪の一部を紙に包んで持って行くシャンクスさんに不審な視線を投げかけた。もちろん気づいた彼は私に説明をしてなんちゃらカードを作ってくると言っていたが、聞きなれない単語や内容は、聞こえても理解するまでに至らなかった私の足りない脳みそでは聞いても聞かなくても同じだったかもしれない。そんな私に気づいたかどうかは定かではないが、彼はすぐ出来るから、なんて言って出て行った。


それがお昼前の出来事。


今はちらほらと戻ってきた船員達を掃除をしながら迎えていると、ヤソップさんが感心したように近づいてきた。


「なんだ、掃除して。ちゃんとゆっくりできたか?」

「はい、おかげさまで。ちょっと寝坊しちゃいました」

「そりゃ良いこった!」


軽快な笑みはシャンクスさんとはまた違い、なんだか安心感がある。それでも昨日、帰ってきた時に言われたデートと言う単語と一緒に思い出したシャンクスさんの手の感触に、一人頬がほてったのがわかった。ヤソップさんは気づかなかったのか?周りをキョロキョロと見ている。何か探しているのだろうか。


「お頭は?」

「シャンクスさんは出かけられましたよ?」

「出かけたァ?」

「はい。カードを作るとかなんとか言って、爪を持って、」

「爪って、名前のか?」

「はい」

「ふ〜ん、そうか。ほー、なるほどなァ」


途端にまた、あのにやりとからかうような笑顔を浮かべるヤソップさん。残念ながら、シャンクスさんが何をしに街に向かったのかもよくわかっていないので、私は訝しげに眉間に皺を寄せるしかできなかった。


「たぶん、もう少しで戻ってくると思いますけど...」

「そうかそうか。ま、よろしく頼むぜ」

「?はい...?」


にこにこ笑顔で肩を叩かれた私は、やっぱり何が何だか。それでもヤソップさんは気にもせず、じゃ、一眠りしてくるわ、とだけ言い残して船内に続く扉を開けて行った。


「なんの話、かな...?」


もうすっかり乾いてしまったモップを両手で持ったまま、午前中よろしく、私は消えぬ疑問にただただ首をかしげるばかりであった。






(不思議な事は続くもの?)














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