どれくらい黙ったままだっただろうか。それでも彼が先を促すこともなければ、あれ以上の言葉をかけてくる事は無かった。それなのに、不思議と沈黙は重くない。


「...平日は、大学に行きます」

「ん」

「休みの日は友達と買い物したり、アルバイトしたり、課題をして...」

「そうか」

「毎日、すっごく楽しい訳じゃないけど、時々すごく嬉しいことがあって...」

「..........」

「すごく悲しい事なんて、本当、ごくまれで」


でも、満たされていたのだ。

シャンクスさんには、多分、さっぱりわからない話だっただろう。でも、彼は頷いたり、そうか、なんて優しく聞いてくれた。

それで、涙が止まらなくなったのだ。



ねぇ、ここはどこなの?
なんで私だけがいるの?


このまま、私はどうなるの?



不安がどっと溢れた。止まらなかった。それに連動するように、涙も止まらなかった。怖い。悲しい。辛い。助けて。溢れてくる感情に、飲まれてしまいそうだった。
こんな真昼間から、こんな人目につく所で号泣するなんて思ってもみなかった。シャンクスさん以外の人は驚いたようにこっちを見ているし。


「名前がなんでここにいるかなんて、おれにはわからんが...」


1人は辛いな。
囁くような声。拾いそびれてしまいそうなくらいの、小さな声と、大きな掌が頭を撫でた。私が、シャンクスさんの声を拾ったように、彼も私の声を拾ってくれたのだろうか。そう思うと余計に泣けてきた。
泣いて頭を撫でられるなんて子供そのものだ。それでもその手に安心したのも確かだった。


「......すみません」

「気にすんな」


鼻をずびずびさせながら言えば、シャンクスさんは豪快に笑って服の袖で私の涙を乱暴に拭った。その豪快さがなんだかとてもありがたく思えた。赤くなったであろう目や鼻と、泣きすぎて痛い頭。泣く前より私の状態は悪いが、やっぱり泣くという行為はすごいのかもしれない。現状は何も変わってないし、どうなるかわからないままなのに、不安も何もかも一緒に流してしまったのかと錯覚してしまうくらい、気分が晴れやかだった。

ただ、気恥ずかしさからシャンクスさんの顔は見れなかった。


「なんか、子供みたい...」

「子供だろ?」

「今年で二十歳になるんですけどね...」


「は!?」






(多分、出会って一番驚かれた)













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