「お、ちゃんと寝れたのか?」


食堂の扉を恐る恐る開けると、なぜかいたシャンクスさんに笑い混じりに声をかけられた。
コックさんはこちらに視線を向けると、一瞬だけ不思議そうな顔をしたものの、合点いったのか早いな、と口元を緩めた。それに私も挨拶と、簡単な自己紹介をすると、飲み物を作るから座ってな、とシャンクスさんの近くを顎でさされた。それに素直に従い、シャンクスさんの近くに腰を下ろす。


「もしかして、私がいたから寝れませんでしたか...?」

「んー?ついさっきまで航海士と航路決めてて戻らなかっただけだから気にすんな」

「はい...」


もはや癖の様に頭をぽんぽんと撫でられた。これは完全に子供扱いだ。そう考えていると、ことん、と目の前に湯気の出るカップを置かれた。その香りは甘く、ココアの様だった。


「カッコ良さそうな事いって、ただ単に飲んでただけじねェか」

「おい!そういう事は黙っとけって!」

「はいはい。悪かったな、せっかく良い所しか見せてなかったのに」


軽く流されたシャンクスさんとコックさんのやりとりを聞きながら、一口飲む。温かさと、程よい甘さが体に染み渡る。ほ、と思わず息を吐いた所で、前を見ればシャンクスさんが頬杖をつきながらこちらを見ていた。


「あ、あの...」

「ん?」

「なにか、へん、ですか...?」

「いや、なんでもねェ。それより、飯でも食うか?」

「えー...っと...。あとで、いただきますね」


そういえば、シャンクスさんだけでなく、キッチンに立ってるコックさんまでも驚いた様な表情をした。聞けば、ご飯を食べない(食べない訳ではないが色々あったのと昨日の夜食でお腹が減らなかった)という選択肢が出てくる事自体が珍しいらしく、驚いてしまったらしい。たしかに、屈強な男の人達しかいないこの船ではご飯はかなりの割合を占める楽しみなのだろう。


「あ、私、お手伝いさせて貰いたくてここに来たんです...!」

「手伝い?」

「はい...、なんだか落ち着かなくて、動いていたくて...」


あー、じゃあ、あれか?なんて言いながらシャンクスさんはコックさんの方を見る。コックさんはこっちか?なんて顔をしている。迷惑だっただろうか...。


「あ、あの!お皿洗いとか、雑用でもなんでも良いんです、何か私にやらせてください...!」


そう言って、立ち上がり、勢い良く頭を下げる。2人が困ったような、何とも言えない空気を感じたが、数秒後に2人の笑い声が私の耳に届いた。そしてコックさんが、キッチンから私に声をかける。


「雑用がそんなしたいなんたァ、珍しい奴だな!」

「う...」

「時間も早ェから、何かしらあるんだろ?」

「当たり前だろ!これからアホほど食う奴らが来るんだからな!」


そう言って豪快に笑う2人に私は微妙についていけず、視線を2人を行ったり来たりしていれば、コックさんと目が合い、いくらでも手伝いは歓迎だ、とキッチンに呼ばれた。






(野菜の皮むき、肉を切る、煮る焼く茹でるやる事が本当に沢山で目が回りそう)(でもそれぐらいがちょうど良いと思う私もたしかにいた)














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