(シリウス)
「ね、キスして」
目の前のシリウスに、言えば、新聞に向けられていた視線がこっちを向き、少し驚いたように目を見開き瞬きを繰り返した。ねぇ。急かすように呟く。
「・・・急に、どうした?」
そしてその綺麗な眉を寄せた。私の珍しい行動に戸惑っているのかもしれない。それでも彼のシャツの襟を引いて顔を寄せれば、少し反応が固い。
「どうもこうも、ただ、したくて」
思っていたよりも、自分の声が拗ねた子供のようだった。シリウスは小さく息を吐くと、私の前髪を掻きあげ額にキスをした。そんなキスじゃ、ますます私が子供みたいじゃないか。と、自分でもわかるほどに唇を尖らした。何が楽しいのか、それに彼は微笑む。
「子ども扱いしないでよ…」
「もっとマシな誘い文句が言えるようになったらな」
「もう、私、子供じゃないわ」
するりと襟を掴む私の手に自分の手を重ねてはずさせる。少し皺になっていた。拗ねる私を横目に笑う彼に、ムッとした。
「ちゃんと、キスして」
怒ったような、拗ねたような強い口調で、見下ろすように向き合えばシリウスは肩を竦めて苦笑をもらすと新聞を横に置く。そのまま背中と頭に腕が回され、引き寄せられた。
「唇によ」
「はいはい」
(仰せのままに)
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