自室の鏡の前。戦いが始まって早数十分。一定の場所から上がらないワンピースのチャック。一旦それを下げて鏡に映る自分を凝視して気づいた。
ぷにっと軽く(本当に軽くだから!)乗るのは肉。恐る恐る手を伸ばせばぷに、と摘める。いや、前は摘め無かったのかと言えば黙るしかないのだが、なんだか増量している気がしてならない。こう、前はもっと張りがあった…、って!そんな老け込んだような事を考えてはダメ!うん、そうまだ若い若い。ホグワーツだってつい何年か前に卒業しただけだしまだそんな経ってないし老化を感じるにはまだまだ早い。そうまだまだ!なんでもまだまだ早いのだ!
「まだか?」
「ノックくらいしてーー!!」
「いてっ!」
下着姿を隠すようにワンピースで体を隠しながら手近にあった物をつい投げれば、がん!なんてシリウスのおでこらへんに目覚まし時計が直撃した。当たった所をさすりながら恨めしそうにこちらを睨み付ける。そして涙目で下着姿の私と、抱えられたワンピースを見てはーん、と言わんばかりに嫌な笑みを浮かべ、
「…太った、か」
「ぐっ…!」
普段はこっちがイラつく位に鈍感な癖にこうやって人の嫌な所を見つけるのが早いのは学生の時からだ!しかも百発百中と言っても良いほどにそれが当たるのだから悔しさに顔を背けるしか出来ない。
「着れなくなった、とか」
「!」
「あぁ、それ気に入ってたな…。チャックが閉まらなくなったか」
「見てたの!?」
非難じみた声を上げれば見ればわかるとでも言わんばかりに息を吐いた。そして距離を詰めて来る。最近食ってばっかだったもんなぁ。目覚まし時計のお返しと言わんばかりに痛い所ばかりを突いてくる。なんて性格悪いんだ!
「そういやあんまり動いてもなかったよな」
どさっ。倒されたのはベッドの上。目の前には眩しい程に笑顔を浮かべるシリウス。
「運動、するか?」
(遠慮します!)
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