「ジェームズー!!」
ばたばたばたばた。階段を駆け降りる音が談話室に響いた。次いで胸ぐらを掴まれて揺さぶられる感覚。
「なんだい真っ昼間っから騒々しい」
僕は今真剣勝負の真っ最中なんだとチェス盤に視線をやるとなまえがバン!と大きな音を立ててチェス盤に手を置く。おかげで駒たちが散らばった。あぁ!あと少しで勝てたのに。そう思ってなまえを見ると頭にタオルを巻いている。
「…新しいヘアスタイルかい?」
「違う!」
周りをきょろきょろと見回して他に人がいない事を確認すると、そのタオルを外しあんたがこの前変な物を食べさせるから!と怒鳴られた。一体僕が何をしたと言うんだ、と言う言葉を飲み込んだ。
「耳?」
「そう!一昨日リリーに悪戯しようとして間違って私が食べたクッキーに変な物入れたでしょ!」
どうしてくれるのよ!怒り心頭と言った怒鳴り声に反応するように動く耳。我ながら中々の物を作ったなぁ、なんて呟いたら睨まれた。
「大体僕はリリーのその姿は見たいが君のその姿は望んでいなっ!?」
「馬鹿だね」
「最低だな」
高らかに言うと本気でなまえが殴ってきた。それに反応するようにリーマスとシリウスが呟くのが遠くで聞こえる。
「あーん!もうリーマスあの馬鹿どうにかしてー」
「うーん、僕には少し荷が重いなぁ。って訳でシリウスお願い」
「お前!人に押し付けんじゃねぇ!」
ぽんぽんと交わされる会話。二人とも少しは僕の心配をしたらどうなんたい。
「大体からなんで?一昨日の話なのになんで今さら?あぁ、何にもなくて良かった、と思った私を返して!そしてどうにかして!」
「時間たてば元に戻るだろ」
「シリウス!あなたは他人事だからそんな事が言えるのよ!」
「なまえ、なまえ、まずは少し落ち着いて」
「リーマス…」
「はい、とりあえずこれつけて」
「リーマス大好き…!」
ぽん、と手渡された可愛らしいニット帽に感動したのかなまえがリーマスに抱きついた。それを見る僕とシリウスはもう勝手にしてくれと言わんばかりにチェス盤に向き合おうとして、
「ジェームズ。勿論、君がなんとかするんだよ」
そう言ってにっこり笑ったリーマスにはい、と小さく頷くだけだった。
(彼は時々とても怖すぎる!)
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