薄いピンクの膨らみを見付けて、少しだけ嬉しくなった。春がもう近い事を思わせる暖かな陽気もまた、私を笑顔にさせる。
「なに笑ってんだよ」
「え?うーん…、言っても良いけどシリウスにわかるかなぁ」
「あのなぁ…」
馬鹿にするなと言わんばかりの表情にまた笑った。彼のざっくばらんとした性格で、私の言いたい事がわかるとは、微妙に思えなかった。この手の話はリーマスやリリーに向いている。シリウスに言っても多分、そんな事か、とか、春だからな、とか、その程度で片されそう。そんな事を思ってるなんて、知らないだろう彼は私の次の言葉を待っていて。
「あそこ、蕾がある」
「あぁ、」
「なんか、あれ見たら楽しいって言うか、心が浮き足立ったの」
「ん、まぁ、春だから蕾くらい…」
「…ロマンがないなぁ」
指差した先を見ても、いまいち返ってこない反応に笑った。やっぱり、と。そんな反応の私に彼は不服そうに眉をひそめた。
「また、来年も見ようね」
(そう呟くように言えば、彼はとても優しく微笑むから、涙が出そうなほどの幸せを噛み締めるのだ)
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