汗がつうっと頬を伝って首筋を流れた。気温は未だ上昇中。右に左に道を歪める目眩坂が憎らしい。手をはたはた動かして自分で自分に風をおくるがむっとした空気ばかりが頬を撫でる。もどかしい。もう少し、もう少し。ふらり。体が歪んだ、気がした。薄汚れた塀に寄りかかっていた。思ったように体が動かない。熱中症のような、逆上せたような。くらくらする。しゃがみこみそうになった。


「なまえ!」


光が動いた。支えられる。嗚呼、彼だ。淡い鳶色の瞳がぼうっとする私に近寄った。端正な顔立ち。薄く笑うと、額に手を当てられる。熱がある!そう騒ぎ立てる。熱いのは彼の手だろう。きらきらと色素の薄い髪が照りつける太陽に柔らかく反射した。太陽の光がこれくらい優しかったなら。ぼんやりと思って笑った。彼に抱えられて本屋の前に。ふわふわする思考の中、骨休めの札を見つけた。けどそんな事もおかまいなしにがらがらと戸を開けた。


「はんにゃ」


私の言葉に更に顔を険しくする店主と、それに笑う探偵。


「京極堂!風邪だ!」

「熱中症でしょう」


ばっさり切り捨てられて、でもそんな事お構い無しに騒いでいるものだから、中禅寺さんは溜め息を吐いて重い腰を上げた。とりあえず楽な体制にでもなろうと、支えてくれてた榎さんの腕を離れて柱の前に座り、寄りかかった。隣に柘榴が、その隣では榎さんが大丈夫か?と様子を伺うように聞いてくる。大丈夫ですよと少し笑った。


「大丈夫かい」


中禅寺さんが氷枕を持ってきた。それを抱きしめてその冷たさを存分に堪能しながら、大丈夫ですよと二回目の言葉を吐いて、ありがとうと二人に言った。






(なんなら僕の膝を貸してやるぞ!)
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