02


果たしてこれは夢なのか?

そんな疑問、夢の中で抱くことはそうそう無い。だからその疑問を持った時点でこれは夢なのだ。ほら、頬をつねっても痛くも無いし、感覚もない。


視界を埋め尽くす深い青と、地平線さえも霞ませる橙色。

それは、目の前に広がる景色は、あの時見た夕焼けと同じだ。
ただ、そばに彼がいないだけ。

たったそれだけなのに、あんなにも心揺さぶられた夕焼けがくすんで見えてしまう。ああ、私は夕焼けに涙を浮かべたんじゃないのか。

彼がいたから。
彼が見たいと思った世界だから。

だからあんなにも鮮やかで、色濃く、私の目に映ったのか。

胸の奥底に眠っていた感情を、揺さぶられた気分だった。あの時、たしかに私はあの世界に、彼に惹かれたのだ。

ようやく思い至った気持ち。届かない思い。もどかしくて、歯がゆくて、それでもどこか安心感を覚えてしまうのは夢だと自覚しているからだろうか。もう繋がるはずがないと半ば諦めているからだろうか。

照らす夕焼けは変わらず美しいのに、波打つ感情の原因にはなり得ていない。ようやく突き止めた気持ちは行き場もなく、ただそこにあるだけ。今更突きつけられても、何もしようがない。ただそうだったんだ、と自分を納得させる他ないじゃないか。なんだってこんな夢を見るんだ。自分自身にそう疎ましく思う。

沈む夕日を見ながら眉間に皺が寄るのを自覚した。ああ、もう、こんなキレイな情景なのにもう何一つ琴線に触れない。思わず少しばかり強く口を結べば、耳に届くのは雨の音。雨なんて降っていないのに。不思議に思い空を見上げたところで夢は終わりを告げた。


「はぁ...」


薄らと目を開くと見慣れた天井。ベッド脇のカーテンの隙間から見える外はまだ暗く、明け方にもなっていない事を示している。そして夢と現実の境目だった雨音は、やっぱり現実のものだったのだ。窓を叩く音は決して静かとは言い難い。強い雨を確認したところで今日が休みである事にまたため息が漏れた。そしてもそり、と窓に背を向け寝返りを打つと、まだ遠い朝を思って再び瞼を下ろすのだった。








望みは胸の奥底に隠される

 

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