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海風が気持ち良い。
今のところは天候も良い。晴れ渡る青空も、広がる海も、ここ最近では見慣れた景色になりつつあるが、それでもやっぱりこんな風に晴れた日は、眺めてしまう。
船内のあちこちから聞こえてくる声も陽気なもので、眼前に広がる青に目を細めていれば、後ろから声をかけられた。
「また見てんのか」
「洗濯の途中なんですけどね」
隣に立ったシャンクスさんが、いつもの笑顔を浮かべながら私の足元にある洗濯カゴに視線を落とした。これから干される服たちがカゴの中に無造作に投げ込まれてる。
「サボってるのが見つかったので干してきますね」
カゴを持ち上げ、甲板のさらに上へと階段を登ると、後ろからシャンクスさんが縁に寄りかかってこちらを見上げているのが見えた。
「慣れたか?」
「おかげさまで」
目を細めて言う彼に、少し声を張って笑顔で返す。海風が髪を乱した。
「なまえ」
「はい?」
片手ではいまいち纏まらない髪を撫で着けながら、シャンクスさんの声に返事をする。
「離すつもりはないからな」
「は...?」
その言葉に思わず疑問系で返してしまった。彼はと言えば少しばかり拗ねたような、申し訳なさそうな、不思議な顔でこちらを見上げている。
「.........あぁ、大丈夫ですよ」
それを数秒だろうか、見つめあった所で私が気づいたように声を出した。洗濯カゴは足元に置き、苦笑いと一緒に登ったばかりの階段をまた降りる。
「選びましたから」
「それは知ってるけどよ、」
「不安にさせちゃいましたか?」
彼の手を両手で取って笑いながら言えば、シャンクスさんは少し歯切れの悪い返答だった。それがむず痒く感じてしまう。
「まぁ、行き来した元々の原因がわからないからきっぱりは言い切れないですけどね」
「それだよなァ」
「でも大丈夫ですよ、探しますもん。私も、シャンクスさんもお互いを」
ね?
と見上げれば、シャンクスさんが降参だと言わんばかりに肩をすくめる。
「ま、そうだな」
「そうですよ」
にこやかに笑い合う私とシャンクスさん。それを見たヤソップさんたちが、からかうように声を掛けてくるのは数秒後だった。
(...いつから見てたんですか)
(まァまァ最初の方だな!)
(ならもっと早く声かけて...!)
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