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以前とは比べ物にならないくらい壮絶な食事風景だった。

あのあとシャンクスさんとぎこちないながらも話しながら片付けをした。気が済んだからか、二日酔いなのか、少し顔色を悪くして部屋に戻ったシャンクスさんと、食堂に向かった私。

食堂には既に何人ものスタッフが忙しなく動き回っていて、声をかけようか迷っていたら奥からザックさんが手招きをしていたので走り寄る。相変わらずの快活な笑顔にほっとした。


「やること探してんなら、あれ、洗っといてくれよ」

「あ、ありがとうございます!」







やっと一息つけたのはあれから2時間近くが経過していた。不慣れとはいえ、皿洗いに2時間とはちょっとしたレストランだ。


「お疲れさん」

「あ、ありがとうございます」


ふ、と息を吐いて厨房端っこのイスに座っていると、ザックさんが飲み物を渡してくれた。素直に受け取り、喉を潤す。


「助かったよ」

「そんな、大したことは出来てないですよ」

「そういうとこ変わんねェな。素直に受け取れよ」

「う...!はい、ありがとう、ございます」


元気良く背中を叩かれ、一瞬息が詰まった。が、すぐに持ち直して照れたように笑った。褒めてくれるのは素直に嬉しい。上手に受け取れないだけで。


「昨日聞いた時は目玉が飛び出るかと思ったぜ」

「そうですね...。私も同じくらい驚いてます」

「ま、気楽にやんな。大所帯になったっつっても気の良い連中ばっかだ」


両手でカップを持ち、ふぅ、と息を吹きかける。ゆらり、と煙が揺らいだ。それを見つめる私を見るザックさんは、片眉を上げたかと思えばキッチンの奥に消えていった。怒涛の朝食風景のあとの静けさに糸が切れたようにイスにもたれ掛かっていると、ぎっ、と木の軋む音と一緒に誰かが食堂に入ってきたようだ。


「お、今日はいつもより早ェな、お頭」

「あー、ん。そうかァ?」


振り返れば、あくびを噛み殺しながら気だるげに歩いてくるシャンクスさん。あの後部屋に戻ったシャンクスさんが何をしていたかは知らないけれど、少し疲れた様子だった。


「丁度なまえの分の飯も作ってたんだ。一緒に食え」

「おォ、そうするか...」


ザックさんが言いながらカウンターに置いたカップを受け取り向かいに腰掛けるシャンクスさんの動きを目で追う。ごく自然な自分のその行動に、子どもが親を後追いする姿が頭をよぎった。


「あれからずっと動き回ってたのか?」

「...休み休みですよ」


船医からの忠告が改めてシャンクスさんから言われたようで目を逸らした。そんな私の様子にシャンクスさんが少し呆れたように息を吐く。違う意味で少し気まずい。逸らした視線を戻せずにいると、いつのまにかザックさんが私達の前にお皿を置く。


「え、これ」


それぞれのお皿に盛られたメニューが違いすぎて思わず言葉が出る。私の方にはパンケーキにサラダ、ベーコン、コンソメスープなどなど食欲のそそる彩り豊かなカフェメニューのような料理。一方のシャンクスさんにはスクランブルエッグが乗せられたトーストという至ってシンプルなもの。せめて?もの配慮なのかフルーツジュースもあるが、差は歴然だった。


「二日酔いの奴にはこれくらいで良いんだよ」

「ま、そりゃそうだな」


あまりの差にかシャンクスさんも苦笑いが出てる。しかしこんなに良いものをいただいて良いのか戸惑ってザックさんを見上げる。


「気にすんな。街に食材買いに行くから冷蔵庫ん中整理したかったから丁度いいんだ」

「そうそう、朝っぱらから動いて腹も減ってるだろ?」


私の戸惑い様にザックさんだけでなくシャンクスさんにまで言われれば食べるしかない。というか、こんな美味しそうな品を目の前に食べないという選択肢は最初からないのだが。


「じゃあ、いただきます...」


おずおずと手を合わせ、パンケーキを一口食べれば思わず頬が緩んだ。ふわっふわで甘すぎなくて美味しい。デザートパンケーキよりも食事用の甘さ控え目なそれに自分が思っていたよりも美味しいという感情が体全体に出ていたのだろう。2人ともぷっ、と吹き出すとザックさんはそのまま食べ終わったらシンクに置いといてくれとたで言い残して食堂から出て行った。


「美味いか?」

「はい...!ふわふわで美味しいです...!」


頬杖をついたシャンクスさんが薄っすら笑みを浮かべながら聞いてくる。美味しい料理に上がったテンションのまま答えれば、彼もまたそりゃ良かった、と笑みを深めた。













(シャンクスさんもパンケーキ食べます?)
(いんや、美味そうに食ってるなまえ見てるだけでもう腹一杯だ)


 

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