■ ホークス・ヒミコ

*短い。ただの捏造の妄想







「ねぇねぇ、ホークスくん!」


雨が降っていた。
いつも居る地下のバーという空間に響く明るい声。雨の降り始めた夕方に、散歩と称して出て行ったヒミコが怪我をしたと聞いたので、近くにいた俺が引き取りがてら様子を見に行けば、血の匂いは纏っているものの、本人は至って元気そうだった。


「どうした?」

「会っちゃったんですよ!ふふふ!」

「わからん」


にこにこと笑うがその姿は、土砂降りだった雨に濡れてびしょ濡れだ。黒霧の置いて行ったタオルで彼女の言葉を遮る様に乱暴に頭を拭いてやれば、わーわー何かを言っていた。


「で、誰に会ったのさ」

「名前ちゃんですよ!」

「...は?」


そのままタオルをヒミコの頭に置いて、俺はイスに腰掛けカウンターに肘をついて聞いてやれば、ヒミコの口から出てきた名前に思わず気の抜けた返事を返してしまった。しかし、特に気にした風も無く嬉しそうに喋り続けるので耳を傾ける。


「ホントに血を使って治すんですねっ。あっ!という間に治っちゃいました」

「あ、そう。怪我してたの」

「そうなんです。足の所をがーっ!と!」


そう言いながら指で太ももをなぞる。なるほど、そこの服が破れてやたら血の染みが多いのに傷が一切無いのはそのせいか。ふーん、と興味無さげに聞くものの、ヒミコの反応からも分かる通り、彼女はヒミコに少なからず気に入られたようである。


「もっと見たかったなぁ...」


自分も血を使う個性だからだろうか。相手になりたい願望を叶えるものが血なので、それ自体に特別な執着を見せるヒミコがどこか恍惚とした表情で呟くそれは酷く物騒な響きを持っていた。


「またすぐ会えますかね」

「さぁねぇ。向こうはヒーローなんだし、いつかは会うんじゃないの」


わくわくと犬歯を見せて笑う彼女に素っ気なくも一応返答をすれば、楽しみだと言わんばかりにいつものように両手を胸の高さに上げていた。














(こりゃまた厄介なのに目をつけられたもんですねぇ、名前さん)


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