■ ホークス

夕方、要請があった。だから駆けつけたのだが、現地に着いてみればそこには瓦礫がぽつりぽつりとあるのみだった。


「怪我人、いないみたいだね」

「あ、名前さんじゃないですか」


息を切らせて来たのだが、そこには相変わらず飄々としたホークスくんが佇んでいた。サイドキックの子達が後処理に追われている。


「良かった。お疲れさまです、ホークスくん」

「いえいえ、こちらこそわざわざどうも」


背中にある大きな翼を見るからに、苦戦もしてなさそうだし、怪我もなさそう。周りの人たちも集まって来ているものの、野次馬やホークスくんのファンのようだし、私は必要なかったようだ。ほっと胸を撫で下ろした。


「さて、と。片付いたことですし、飯でも行きません?」

「.......あ、私?」

「他に誰が?」


彼の長身が曲げられ、顔を覗き込まれる。片付いたも何も私は用無しで何もしていないので、一瞬間が空いてしまった。遅れた反応にホークスくんが面白そうに笑う。年相応のくしゃりとした笑みだ。


「ううん...。来ただけになっちゃうから後処理に加わるよ」

「それはウチの優秀なサイドキックに任せてくださいよ」

「でも...」


と、渋っているとぎゅるうぅぅと何とも可愛らしくない音が私のお腹から聞こえた。はっとして誤魔化すように大きく咳払いをしてみるも、ホークスくんが俯いて肩を震わせているのを見ると聞こえてしまっているようだ。良い年して子供のように空気を読まない私のお腹に、恥ずかしさに顔を覆う。


「ごめ...!私のお腹が空気読まなくて...!」

「いや...、良いです。ナイスタイミング」


くつくつと笑いながらホークスくんが顔を覆う手を取る。視界に入って来た彼の目は涙目だった。そこまで笑われると余計に恥ずかしく、顔の火照りが収まらない。


「俺も腹減って倒れそうなんで、早く行きましょうか」

「う...。なんか気を遣わせてごめんね...」

「何言ってんです。俺が名前さんと飯食いたいだけなんで」


そのまま手を引かれて歩き出すホークスくんにならって足を動かす。とても年下とは思えないくらいにがっしりした手に体格、頼り甲斐のある大きな翼。いやはや、若手のホープだなぁ、と見つめる。


「ごめんね、付き合わせちゃって」

「何がです?」

「だって、飛んだ方が楽なんじゃないの?」


私が話しかけたからか、ホークスくんの歩みが止まった。一歩進んでしまった私はそのまま彼の翼に軽くぶつかってしまい、慌てて謝る。


「っぷ、ごめ」

「たまには歩くのも良いんですよ」

「え?あ、そうなの?」


ホークスくんの視線がこちらに向けられた。流れるような動作で、隣に立ったホークスくんが繋いだ手を一度離し、指をからませるように握り直す。


「名前さんとなら、ゆっくり歩くのも悪くないんで」

「そう、なの?」

「......ダメかぁ」

「え!ごめん!何か違った!?」

「いや、こっちの話ですから気にしないでください」

「んん?うん?」























(あーあ。先は長いなぁ)


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