■ イレイザーヘッド

消太さんに学校が終わると同時に出動要請が出て早数時間。私は部屋でのんびりと温かい紅茶を飲みながらテレビを観ていた。観ていた、とは言っても流し見でそわそわとする気持ちのせいで内容は全く入ってこなかった。

そう、今日は消太さんの誕生日だ。

とは言うものの、今日の今日まで知らなかった私はサプライズの準備もできてなければ、誕生日プレゼントの用意すらもできていない。

というか、聞いたのだって夕方だった。

マイク先生に言われては?となって言った本人もは?となっていた。慌ててケーキだけでも!と買いに出たは良いものの、いまいち好みがわからなかったので無難なショートケーキというお粗末な準備しかできずにいた。あぁ、馬鹿だなぁ、私。

そわそわと落ち着かないが、自分の抜けっぷりに落胆してしまう。体育座りをする膝に俯いて顔を置いてため息を吐いた時、がちゃりと扉の開く音が聞こえて大急ぎで扉へと走る。


「おかえりなさ...、すごい荷物!!」

「あぁ、ただいま」


一旦学校に戻って荷物を取ってきたのだろう、消太さんの腕には大小様々で色とりどりのプレゼントがこれでもかと抱えられていて、どんな反応でそれを貰ったんだろうと考えるとなんだか面白い。


「ふふ、お風呂どうぞ。プレゼントは置いておきますね」

「持ち切れるか?」


ぎりぎり、といった具合だが、何とか全部を受け取って部屋に戻る。戻る時に消太さんにはタオル持っていきますね、と伝えれば、わかったと素直にバスルームへと向かった。


「はぁー、すごい量」


部屋に戻って出来るだけラッピングを崩さないように床に置いていく。これとか一応可愛くリボンがかかっているが寝袋だし。ピンポイント過ぎるプレゼントに思わず吹き出してしまった。

と、プレゼントの数々を見ていたら思ったよりも時間がかかっていたようだ。後ろに気配を感じて振り返れば、上半身裸の消太さんが首かけタオルで髪を拭きながらこちらを見ていた。


「あぁ!タオル!すみません!」


空いた手に上着を持っているのを見るに、肩掛けタオルでは髪まで拭ききれなかったので濡れるのを嫌がって着てないのかもしれない。慌ててバスタオルを持ってきて、ソファに座らせる。


「うぅ、ごめんなさい...」

「いや、暑かったからいい」


とはいえもう11月。確かに気温はそこまで寒くはないけれど、半裸で過ごす気温でもない。わしゃわしゃと消太さんの髪を拭きながら謝る。ちらちらと視界に入る逞しい胸板にどきどきしているのは、タオルで顔が見えていないのでバレてないはず。


「はい!どうぞ!着てください」


ぽたぽたと滴っていた髪の水気が取れ、消太さんが上着に腕を通す。そこでようやく落ち着いた。私が。


「あの...、消太さん...!」

「どうかしたか?」


誕生日なのにプレゼントを用意できてなくてすみません?むしろ知らなくてごめんなさいだろうか。それともおめでとうと祝うべきか。

名前を呼んだは良いものの、ぐるぐると考えがまとまらず、消太さんを見たまま固まっていると、彼が不思議そうに眉を寄せた。


「えっとですね、」

「名前?」

「誕生日おめでとうございます...!」


とりあえず言うべきはお祝いの言葉だろう。そう考え、目の前の人に言うような声量ではない大きさで言えば、驚いたのか消太さんが一瞬目を瞬かせた。


「あの、マイク先生から今日が消太さんの誕生日だと伺って...」

「...あぁ、まぁ、そうだな」

「でも、私何も用意できてなくて...。ぎりぎりケーキは買いましたけど!」

「そんなにへこむことじゃないだろ」


消太さんのことだから、プレゼントとかケーキの有無なんて本当に気にしてないのだろうけど、私が気にしてしまう。すみません...、としょんぼりと俯けば、いいよ、と頭を撫でられた。


「でも、みんなはちゃんとあげれてます...」

「俺が気にしてないんだから気にする必要ないだろ」

「私も消太さんに何かあげたいんですー...!」


彼が欲しいものも、好きなものも、そんなに多くを知っているわけではないけれど。それでも年に一度なのだ、お祝いして、形として何かを渡したいと思ってしまう。特にあのプレゼントの数々を見ると。


「それじゃ、今日はもう何もしないで隣にいてくれれば良いよ」

「うぅ...。そんなの私が嬉しいだけじゃないですか...」

「お互いにメリットしかないなんて合理的だな」


ぐ、と肩に腕を回され抱き寄せられる。身体が消太さんに寄りかかるように寄り添う。

幸せ。落ち着く。嬉しい。恥ずかしい。好き。
こちらを見下ろして笑う消太さんを見れない。あぁ、もう、本当に。


「...好きだなぁ」


ふぅ、と無意識に吐息とともに呟けば、回された手がぴくりと動く。その不規則な動きに、あれ、私今声でてたか...?と眉を寄せた。伺うように隣を見上げれば、消太さんもこちらを見下ろしていた。


「...良いプレゼントだな」

「そういうわけじゃないんです...!」


やっぱり聞こえてた!
ぶわっと顔どころか身体すらも恥ずかしさで暑くなる。自分で言っておいて何だが、私も不意打ちだったのでかなり恥ずかしい。


「続きは身体でくれるんだろ?プレゼント」

「ち!ちがいま、!!」


ちゅ、と私の言葉を遮るようにキスをされ、目の前でにやりと笑う消太さんに私はもう反論すらできずに、口をぱくぱくと無意味に開閉するしかできなかった。














(次は絶対にプレゼント用意しよう...!)
(俺は同じで良いぞ)
(私が良くないです!)


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