■ 通形ミリオ

「あ、通形くん」


日も落ちた時間、出先から雄英に戻ろうと歩いていると前を歩く大きな影が見えて声をかけた。その声に気づいた彼が振り返り、私を見つけると笑顔で手を振ってくれた。犬みたいで可愛い。


「インターンの帰り?」

「そう!サーにここぞとしごかれたよね」

「あらま、それはお疲れさまでした」


にこにこと話す通形くんの半袖から覗く腕はすり傷切り傷だらけだが楽しそう。身振り手振りでインターン先であったことを楽しそうに話す姿に、こちらまで楽しくなってくる。


「名前さんは?どこか行ってたんだよね」

「あ、うん。出張先から今戻ったの」

「それはそれは、お疲れさまだね!」


元気一杯、大型犬な通形くんは話してて癒される。私よりもずっと身長の高い彼とてくてく並んで歩いていてふと気づく。歩調を合わせてくれてるようだ。彼の言動は豪快さも目立つが、なかなか細やかな気遣い屋さんでくすくすと笑えば不思議そうに首を傾げていた。


「ううん、なんでもない」

「なになに、気になるよね!」

「それよりも傷だらけだね」

「あぁ、これ?」


言えばぐっと腕を持ち上げて見せる。既に傷跡になっているものも多数あるのだけれど、それを上書きするように至る所にある。さすがナイトアイ事務所。


「せっかくだし治しちゃうよ」

「えぇ!このくらい放っておいても、」

「まぁまぁ、今日はたまたま会えたんだし」


手をぶんぶん振る通形くんを押しのけ、カバンから薬を取り出す。片手で持ちながら、少し距離を縮め、歩きながら塗っていく。


「相変わらず逞しい腕だこと」

「トレーニングは欠かせないよね」


塗りながら感嘆の声が漏れる。彼の個性は決して攻撃に優れているわけではないから、身体を鍛えるのは当然なのだろうけれど、私からすればまだ高校生なのだ。しっかりしてるなぁと思う。


「名前さんの個性は優しいね」

「そう?」

「うん。とても優しいと思う」


歩きながら、時々腕に張り付く私を見下ろしながら言う通形くん。初めて言われた言い回しに思わず疑問で返してしまったが、きっぱりと言い切る彼にほぅ、と息が漏れた。


「...嬉しい。ありがとう」

「それはこっちの台詞だよね!」


やばい、普通に喜んでしまった。
思わず頬が緩んでしまい、それを見られないように少し俯いて歩く。しかし通形くんが腰を曲げて覗き込むものだから、肩を揺らして驚いてしまった。


「あ、名前さん笑ってるね」

「覗き込まないで...」


うぅ、恥ずかしい。と薬をしまいこみ、そのまま両手で緩んでいた頬を押さえる。がっつりにやけているのが見られて恥ずかしい。


「名前さんは照れ屋で可愛いよね」

「そんな年じゃないんだけど...」

「そんな事ないよね!十分可愛いよ」

「うぅ、もうやめて...」


この年で可愛いなんて連呼されると恥ずかしい。しかもこんな年下に。べし、と通形くんの腕を軽く叩けば、やりすぎちゃったね、と彼はまた笑ったのだった。















(本気なんだけどね!って言ったらまた恥ずかしがるよね)


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