■ 121話

*121話の寮に戻ってくるとこ






「あらまぁ...」


もうだいぶ前に暗くなった時刻。寮の前で思わず声を出してしまったのは、オールマイトに連れてこられたぼろぼろの2人を目にしたからだ。一方で隣に立つ相澤先生がかなりご立腹であることは空気で感じとれた。相澤先生側の身体がピリピリしてる気すらする。


「お待たせしたね、2人とも」

「いえいえ、お帰りなさい」


申し訳なさそうなオールマイトに緑谷くんに、つん、とそっぽを向く爆豪くん。見れば見るほどぼろぼろな姿の2人に苦笑いが出てしまった。そして無言の相澤先生が怖い。横目で相澤先生を気にしつつ、2人の元に寄る。ううむ、打撲に火傷にと何とも痛々しい。すると背後から小さく息を吐く音が聞こえ、思わずびくりと肩を揺らすのは私と緑谷くんとオールマイト。いや、オールマイトはビクつかなくても良いんじゃないですか?


「...とりあえず中に入れ。苗字、2人を治すな」

「うっ...」


釘を刺されてしまい、相澤先生から見えないように持っていた剃刀の替刃をしまう。バレない程度にと思っていたがダメだったようだ。がちゃ、と扉を開けて歩き出す相澤先生に付いていくように私たちも歩き出す。前から相澤先生、その後ろに緑谷くんと爆豪くん、最後に私とオールマイト。こそこそ、とオールマイトに耳打ちをする。


「話したんですか?」

「そうだね、気をつかわせてしまったよ。大人なのに情けない」


眉を下げて笑うオールマイト。言っていることが本心かはわからないけれど、私としては良かったと思っていもいる。緑谷くんは後継なのでもちろんだが、爆豪くんもとても良い子だ。だからバレても良い訳ではないけれど、彼ら2人は多分、いや、絶対にオールマイトを悪い方に裏切らない。それはオールマイトにとっても支えとなりうると思う。


「子どもだ、子どもだと思ってるのは大人だけかもしれないですね」

「全くだ。子どもの成長は早いね」


ふぅ、と肩をすくめて息を吐くオールマイトにくしゃりと頭を撫でられた。あれ、子どもって私も入ってたのか?と思わず疑問符が出てしまった。前を行く3人と少し距離ができたのに気付き、私たちも歩調を早めて部屋に入る。寮の中の医務室だ。


「お前らはここで待ってろ」


部屋の奥でちんまりと座らせられた2人に念を押す相澤先生。報告をくれた見回りのロボがうるさいようなので片付いたことを言いに行くようだ。部屋に入って緑谷くんと爆豪くんの隣に立つオールマイトに、扉の横に立つ私。


「軽く手当だけしておいてくれ。軽くだからな」

「ふふ、わかりました」


さらに私にも念を押していく相澤先生に思わず笑ってしまった。それを横目で見られてしまったのでごほん、とワザとらしく咳で誤魔化した。


「さて。じゃあ、君たちの怖い担任の先生が戻る前にちゃっちゃと手当しますか」

「うるせぇ、いらん」

「ちょ、かっちゃん!」

「大丈夫よー、個性は使わないから」


戸棚から消毒液とガーゼ、包帯と取り出す。相変わらず噛み付いてくる爆豪くんとそれを制する緑谷くん。手当てをしつつその掛け合いを聞いていると険悪な幼馴染みだと言っていたが、なんだかそんな雰囲気は感じられなかった。今回の件でわだかまりが少しでもなくなったのだろうか?


「ありがとう、爆豪くん」

「は?何言っとんだてめぇ」

「オールマイトのこと。色々とね」

「は?お前、」


察しの良い爆豪くんが言葉を続けようとした時、扉が開いた。相澤先生が戻ってきたようだ。私はしー、と人差し指を口元に持っていって笑うと、爆豪くんは納得いってないように眉をひそめたのだった。













(さて、と)
(相澤くん、お手柔らかに...)
(試験終えたその晩にケンカとは元気があって大変よろしい)
(わぁ、目が怖い)


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