■ イレイザーヘッド

お風呂上がりなのに髪から滴を垂らしながら仕事をする相澤先生を見て、自室からドライヤーを持ってきた。あの様子じゃいつものことなんだろうけど、今日は少し肌寒いから風邪ひいちゃうかもしれない。


「相澤先生、こっち」

「勝手に乾く」

「私が勝手にやってますから、お仕事してて大丈夫ですよ」


案の定、私が持つドライヤーを見て興味なさそうに視線をノートパソコンに戻す。それを大丈夫と押しのけ、ついでに音も静かなやつですから、と付け加えれば気怠そうにデスクから立ち、ローテーブルの上にノートパソコンを置いて座る。私はその後ろのソファに座って、タオルとドライヤーのスイッチをオンにして少し上から温風を当てる。

お互い無言。相澤先生はキーボードを規則的に叩き、私は相澤先生の髪を乾かす。音の少ない部屋では、いくら静かと言えどドライヤーの音は目立ってしまう。

相澤先生の髪を触りながら、結構柔らかいんだなぁ、とかぴんぴん跳ねる髪が可愛いなぁ、とかぼんやりと思う。指先を通る髪が気持ちいい。最初の反応とは違い、結構身を委ねてくれてる様子になんだろう、猫?動物?を触ってるみたいだとくすりと笑った。だいぶ乾いてきた、とドライヤーの風量を少なくしたあたりで、相澤先生が少し後ろに傾いていることに気づく。手元は動いていない。あれ?寝た?


「相澤先生...?」


そっと上から覗き込む。前髪に隠れて見えにくい。指先でそっと目元を隠す髪を除けるといつもよりも眠そうだが、ちゃんと目が合い一瞬だけ喉から音にならない悲鳴が出た。びっくりした...。


「乾きましたよ...?」


眠いのかな、と思って小声で話しかければ、先ほどよりも気怠そうというか、眠そうに返事を返されその様子に思わずきゅんとしてしまった。なんだか無防備で可愛いくて頬が緩む。身体を預けてくれてる相澤先生によしよし、と頭を撫でる。


「もう寝ますか?」

「...そうする」


そして素直な返事。やだ、すごく可愛い。寝るとは言ったものの、動くのも億劫なのか、そのままの姿勢から動かない相澤先生を可愛い可愛いと撫でる手が止まらない。


「今日はなんだか可愛いですねぇ」


さらさらとした髪を梳きながら言えば、ぎゅ、と手を握られた。本当に眠いのか、いつもよりその手は温かい。


「寝るか」

「...ぅえっ!?」


動くのも億劫なほどお疲れなのかと思えばすっと立ち上がり抱きかかえられ、緩んでいた頬が引き締まる。バランスを取るように彼の首に腕を回すと、それに反応してか抱きかかえられた身体がさらに引き寄せられ、きついくらいに抱きすくめられた。


「相澤先生...!」

「寝るんだろ?」


そう言うとちゅ、と首筋にキスをされ、抱えられている状態で身体が跳ねる。じわじわと広がる熱に顔まで熱くなった。















(でも疲れているのは本当のようで、相澤先生はベッドに寝転ぶとすぐ寝息をたてました)
(しかし私は抱えられたままベッドから抜け出すことができず眠れませんでした)


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