左腕なくした時、バカみてェに泣いていたのはルフィだけじゃなかった。

船医から強制的に寝て休めの一言を貰い、傷口から広がる淡い熱を帯びた体をゆらゆら揺れるベッドの上で休ませている時だった。ひやりと額に置かれた冷たいタオルの感覚に、まどろんでいた頭が少しだけ現実に引き戻されると、ベッドの横にあるイスに腰をかけているなまえが目に入った。


「あ、起こした?」

「いや…、大丈夫だ」


段々と覚める視界が捕らえた、赤い目をしたなまえに、少しだけ笑った。それにつられるようになまえも口元を緩めて、おれの右手を掴む。


「良かった、」


右手に頬を寄せて、心底ほっとしたような表情を浮かべたかと思うと、次第に潤んでいく瞳からはらはらと伝う涙に思わず起き上がった。


「泣くな」


ごめんね、小さく呟いて微笑むなまえを引き寄せた。小さな笑い声が聞こえた。それに安心したおれがいた。





(腕を無くした事に貴方の中には悔やむと言う言葉も悲しいと言う言葉もないでしょう)(だからあたしも悲しいわけじゃないの、でも苦しくて)



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