この間読んだ本の一説に、運命の恋人同士はお互いの小指と小指に見えない赤い糸が結ばれている。(らしい)
「見えないなら意味ないよね」
向かいのイスに座るベンにそう言えば、めんどくさそうに煙を吐いた。(けむいけむい)(煙草くさくなる)
「見えないからこそなんだろ」
思わず感心してしまった。(ほう、なるほど)感心ついでに、ぐびっと目の前にある酒を一気に飲み干して新しく注ぐ。
「赤い糸って、長いのかな」
「さあな」
ぐびっとベンはなみなみと入っていた酒を飲みながら見えねぇんだろ。と言った。(あたしの酒がぁぁぁぁぁ!)そしてまた注ごうとしているベンから酒瓶ごと奪い取って睨みつける。
「食い意地っつーか飲み意地はってんな」
「これ高かったの!」
間髪入れずに答えれば、煙と共に悪ィ悪ィ。と悪びれずに言われた。(軽い!軽すぎる!)(今度なんか買ってやるよ。許す!)
「でもさあ、」
話し始めれば、まだあんのか。と視線を向けられた。(さっき飲んだ酒の分も付き合え!)
「こう、くるくるっと糸巻いたら運命の恋人がくるとかだったら楽だよね」
小指を立てて、巻く仕草をした時、バタンと扉が開いた。
「お、こんなとこいたのか」
あまりのタイミングの良さに固まっていると、ベンが肩を震わせ、笑いをかみ殺しながら
「来たじゃねえか」
運命の恋人。
そう告げて甲板へとシャンクスの横を通って消えた。
運命の赤い糸?
(いやいやいやいや、なにそれ有り得ないでしょ)
(え?なんの話だよ)
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