タイム・トラベル


もくもくと煙たい空気を吸って、ナマエは目を覚ました。まだ外は暗い。夜中の一時をまわったところだった。

ここは神羅カンパニーの社宅、ナマエの自室だった。白いベッドカバーが揺れる。寝ぼけ眼で目を擦って、ナマエは昨晩のことを思い返していた。確か、誕生日を祝いたいからと早く帰ってきてもらった恋人と、共に眠りについたのだ。眠っていたツォンが起きたのだろうか。白っぽい部屋の明かりを眩しく感じつつ、ナマエはむくりと起き上がった。

そして絶句した、のち声を上げようとした。それを目敏く察知してか、大きな手がナマエの口をしっかりと塞いだ。

「だ、だれ!ツォンは?むぐ、んん」
「“俺”だ。安心しろ」
「むぐ、ううう」

隣で眠っていたはずの恋人は、その面影を残した別人に様変わりしていた。鍛え上げられた肉体は、同じ。目元も、似ている。瞳の色だって。けれどどうしても同一人物には見えず、ナマエの頭は混乱していた。髪型、そうだ髪型が違う。ツォンだって長い髪をしていたけれど、目の前の男はずっともっと長い。

そして最大の違和感は、その年齢によるものだった。

ナマエとツォンは同年代だ。詳しくは教えてもらえなかったけれど、おそらく同じ二十代前半だろうとナマエは踏んでいる。けれどどうだ。目の前の“自分もツォンだ”と名乗る男は、どう見ても二十代後半、もしくは三十代前半にしか見えない。一晩でここまで老け込むことは到底考え難く、ならばナマエに導き出せる答えは一つしかなかった。

「む…」

大人しくなったナマエの口から、“自称ツォン”の手が剥がれた。ナマエは大きく息を吸って、吐いて、それを二回ほど繰り返した後、ようやっと意を決したように口を開いた。

「ツォンの、お兄さんですか?」
「…いや、本人だ。遽に信じ難いだろうが」

男の方も少しは戸惑っているようだった。それでもナマエほど驚いたりはしていない様子だったけれど。長い髪を背に流して、男はベッドから立ち上がる。そしてジャケットの懐から一枚の紙切れを取り出した。

「社員証だ。身分証明書が、こんなものしかなくてすまない。詳しくは話せないんだが、とある事情で俺はここにいる」

手に握らされた社員証は、ナマエが知っている彼のものよりもずっとぼろぼろで、所々血が滲んでいる。真っ直ぐにこちらを見つめている写真も、おそらく今の彼ではない。真面目な顔つきこそ彼そのものではあったけれど、ポニーテールにしていたはずの黒髪は下ろしており、ほんの少しだが目元に年齢を感じる。“TSENG”としっかり名前の書かれた社員証をひっくり返したり、部屋の明かりに透かすようにして見た後、ナマエは男―ツォンに返却した。

「本当にツォンなの?」
「そうだ」

目の前の男は、ツォンで、何故だか詳しくは分からないけれど、未来からやってきたらしい。まるでSF映画のような話だ。やっぱりどこか疑わしい。けれど今のツォンも、昔のツォンも、冗談で人を惑わすようなことをする人間ではなく、至って真面目に、とてもとても真剣にナマエを説得しようとしている。

「じゃあ、わたし達しか知らない事を教えてよ」
「構わない」
「ツォンはわたしにどうやって告白したでしょう?」

簡単なクイズだ。彼が本物なら、まず間違いなく答えられる問題だろう。そして彼以外はきっと知らない事実に違いないという確信があった。何故なら、この問いの答えはひどく「俺がお前に告白をした。お前に恋人がいると思い、焦って口頭で告白した。今思えばかなりの下策だったな。実際のところお前に恋人はおらず、判断を急いだ俺の勘違いだった。結果として俺たちは交際を始めることになった。今から、大体半年ほど前の話か」…ひどく彼のプライドを傷つけるものだったからだ。

間髪入れずに答えたツォン―彼が本物のツォンだと言うことを、もはや認めざるを得ない―は、恥じらう様子も見せず、淡々と問いに答えた。

告白はもっとスマートに、と思っていたらしい彼はこの話題を大変嫌っていて、ザックスやレノから「どっちから告ったの」や「どんな風に告ったの」などの話題が振られると一切口を開かなくなった。だから二人の真実を知っているのは、ナマエとツォン以外には居なかったし、きっとツォンのこと、他の誰にも漏らすようなことはしないだろう。もちろんナマエも、彼の名誉の為に墓場まで持って行こうと思っていた。まあ、実際にはそんなに恥じるようなことでは無いとも思っていたけれども。

「本当の本当にツォンなの?」
「そうだと言ってるだろう」

ゆるりと唇に弧を描いて、ツォンがナマエの頭を撫ぜた。「髪、伸ばしてたな。そういえば」とどこか懐かしそうに笑いかける男には、あと何年したら会えるのだろう。とりあえずナマエは未来の恋人に抱きついてみることにした。ツォンは嫌がるそぶりを見せるどころか、両手を広げてナマエを迎え入れた。

「久しぶり?それとも初めまして?」
「どちらでも無いさ」

力強い腕はナマエの知ってるものと何ら変わりない。ただ腕や背に残る深い傷跡が、彼が潜り抜けてきた、また彼がこれから乗り越えるだろう沢山の戦いを思わせた。

初めましてでもなく、久しぶりでもない。ならばナマエとツォンは、きっとこの先も一緒に居るのだろう。ナマエは胸の奥がじんと暖まる心地だった。嗅ぎ慣れたはずの香水の香りは、今よりずっと重みが増している。頬を擽る長い髪の毛は、何があって伸ばすのだろう。ナマエのことを愛おしげに抱きしめるこの腕は、いったいどれほどのものを守ってきたのだろう。

「あまり時間がない、ナマエにはこれを渡しておきたくて」
そう言ってツォンは、錠剤をひとつ手渡した。それは何の変哲もない、小さな白い錠剤だった。
「これは?」
「俺に出会ったせいで、この後…数時間もすればお前は体調を崩してしまう。詳しく話すと長くなるが、空間軸の歪みによって発生してしまう、乗り物酔いのような症状だ。この錠剤で症状は消える。必ず、服用するように」
「毒とかじゃない?」
「俺がナマエに一服盛るとでも?」

ナマエはくすくす笑いながら、錠剤をきちんと受け取った。今までに、ツォンはナマエを傷付けるような嘘をついたりはしなかった。彼はきっと、この先だってそんなことはしない。この優しくて、器用過ぎるあまりに少し不器用な恋人は、何年経ってもナマエのことを大切にしてくれるのだ。ツォンの腕の中で、ナマエは何度も頷いた。まだ月が高い時刻だ。あたたかい温もりに包まれて、ナマエのまぶたが徐々に下がる。ツォンは優しくナマエの背を摩った。ナマエに渡した錠剤は、うとうとしているナマエの指から滑り落ち、シーツの海で遭難しないよう、ベッドサイドに置いておく。

「忘れるなよ、錠剤はベッドサイドに置いてある。必ず飲むんだ。必ず、何があってもだ」
「うん…かならず飲むよ。ツォンが用意してくれたんだもんね。ありがとう…」

うわごとのように錠剤を飲むと繰り返しながら、ナマエは再び眠りについた。目が覚めたら、きっといつもの朝が来る。澄ました顔の、ポニーテールのツォンが、いつまで寝てる気だとナマエを揺り起こすだろう。

起きたら、ツォンに言ってやるんだ。十年後の君に会ったよって。

十年後もかっこよかったよって。







___







ツォンは、薄暗い廊下をひとり歩いていた。

毎日のように通っていた神羅カンパニー本社ビルの廊下を最後に歩いたのは、もう五年も前のことだったと思うと、ひどく不思議な心地がした。真新しい廊下を、革靴が踏み締める乾いた音がカツカツと響いている。ツォンは足元で規則正しく光るLEDのライトが、当時の最先端だったことを思い出していた。

地下三階のセキュリティロックを開けて、タークスのオフィスに入る。室内はがらんとしていた。昼夜関係なく働くタークスが、皆出払っている日を選んで決行した。

ツォンは、一番左端のチェアに腰掛け、コンピューターが立ち上がるまでの五分ほどをじっと待った。コチコチと、規則正しく時を刻む音は、彼のしている皮のバンドの古い腕時計によるものだった。

主任のデスクはまだ、ヴェルドが座っている。

目の前のコンピューターは、ツォンが最後に使っていたものよりももう、二代ほど古い型だった。静まり返ったオフィスの中で、冷却ファンがごうごうと唸りを上げている。

ツォンは自身の両手を、先ほどまであった温もりを確かめるかのように握りしめた。ギュ、と皮の手袋が軋んだ。すっかり手に馴染んだ革手袋も、昔に比べると随分汚れてしまっていた。   
 
アクセスコードの入力も、社員証の認証も、生体認証の手順ですら一切忘れておらず、ツォンは自身がいかに長い期間この場で働いたかをまざまざと思い知った。

コンピューターにUSBを挿し込んで、いくつかのデータを抜き出す。大きなエラーは出ない。無論、出ないように細工をしてあるのだが。

ツォンがこの時代にわざわざやって来たのには、勿論それなりの理由があった。

世界がメテオの脅威に晒されて、およそ五年ほどの歳月が経った。神羅カンパニーは大打撃を受け、その巨大な組織はかつてないほどの縮小を余儀なくされた。

けれど現社長であるルーファウス・神羅の辞書に諦めの二文字は無く、彼は日夜世界の復興と銘を打って、神羅カンパニー再建に励んでいる。部下であるツォンも例外ではない。

ツォンの上司たるルーファウスは、かつての神羅カンパニーにあって、メテオによって失われたデータの回収のため、この“夢のような”タイムトラベルマシンの使用に踏み切った。

いつでもどこでも行けるようなマシンではない。かなり厳しい条件のもと、たった四時間だけ、過去の自分と入れ替わることができる装置だった。燃料の使用量も尋常では無く、魔晄エネルギーの存在しない未来―つまり、今ここでハッキングをしているツォンの生きる現代において、使用可能な回数はおそらく一回限りであった。

遡って辿り着ける日時は、使用日よりきっちり十年前。四時間の間に必ず目的を達成せねばならない。チャンスはたった一度きり。失敗は許されないミッションだった。

ツォンはダウンロード中、と表示されているコンピューターをぼんやりと見つめている。慌てずとも、あと一時間ほど余裕があった。彼は缶コーヒーを買って持って来なかったことを少し勿体なく思った。当時は、二度と飲めなくなることなど考えなかった。今は飲めない、けれど安っぽいあの味は、よくナマエがツォンに差し入れてくれたものだった。


『ツォンはわたしにどうやって告白したでしょう?』

ナマエから出された問いは、随分と簡単なものだった。あの屈辱的な告白を、ツォンは一日たりとも忘れたことはない。

“今日”からおよそ半年前、ツォンとナマエの交際は始まった。それは、先にも述べたように、ツォンの告白から始まった。タークスに所属していたツォンは、当時友人と呼べる友人はザックスくらいしかおらず、ナマエとの出会いは彼によるものだった。

とはいえ、ツォンはナマエの存在はずっと前から知っていたし、たまたま会話するきっかけになったのが、ザックスというだけだった。

ザックスは大抵の女性社員と仲が良く、ナマエはそのうちの一人だった。彼女と会話をするようになるずっと前、ツォンが最初にナマエに抱いた印象は、“ぼーっと生きている女”くらいなものだった。彼女はよく転ぶし、よく笑う。よく怒っては、よく泣いていた。

ナマエは覚えていないかもしれない。確かに、友人になったきっかけはザックスだったが、ツォンはそれ以前にもナマエと話したことがあった。

あれは確か、入社してすぐの頃だった。夜中の二十三時ごろ、もう終電も過ぎようとしている時刻だった。リフレッシュフロアで啜り泣く、ひとりの女の声があった。タークスの任務は命の危険を感じるようなものも多い。ツォンは、大抵の事には動じなかったけれど、泣いている女のシャツは、ちょうど月光に照らされて青白く光っており、まさか幽霊かモンスターではないだろうなと目を疑ったのだ。

「おい」

ツォンは戸惑いがちに声をかけた。右腕後ろには、銃を構えていた。女が人間でない場合には、発砲してしまおうとさえ思っていた。

「は、はい!」

突然声をかけられた女は、背筋をしゃんと伸ばしてツォンの方を見た。ツォンは、生きてる人間だった事に少しほっとして、そしてこっそりと銃を仕舞った。大きな丸い目が、ツォンをじっと見据えていた。水気を含んできらきらと光った瞳は、雨上がりに輝く水溜りのようだと思った。

「大丈夫、か?」
「は、はい」

女はひどく落ち込んでいた。自身の出来の悪さに辟易しているのだと嘆いていた。内容は要約すると、数字の転記を間違えた、だとかファックスの送り先を間違えた、だとか大層くだらないものだったと記憶している。そしてそれは、新しい事を覚えるのに必死である故に引き起こされる、些細なものだとも思った。ツォンは自身の手の中にあった缶コーヒーを差し出して、らしくなくも彼女を励ましたのだった。

誰かを励ますのは、初めてだった。

そして自身がかけた言葉で、誰かがこんなにも喜んでいるのを見るのも初めてだった。

「ありがとう、ええと、名前は…」
「そのうちまた、社内でも会うだろう。名前はその時にでも」
「うん」
「もう遅い。送っていってやりたいが、俺はまだ仕事が残っている」
「大丈夫、わたしの家はここから近いし、タクシーに乗ればあっという間だよ」
「じゃあこれを、タクシー代に使ってくれ。気に病むようなら、お前が出世した時に返してくれればいい」

そう言って紙幣を少し強引に彼女の手の中へ押しつけて、ツォンはオフィスに舞い戻った。道草を食ってしまったために、主任のヴェルドから小言を貰う可能性があった。なにより彼は、赤くなった自身の頬を隠さなければならなかった。

そのあと結局彼女と社内で会うことはなく、ナマエがツォンの名前を知ったのは、ザックスに呼ばれて行った居酒屋で、偶然にも隣同士になったことがきっかけだった。


ダウンロードを完了したUSBを引き抜いて、ツォンはオフィスを後にした。コンピューターの電源は落とし、オフィスは来た時となんら変わりのない状態になっていた。

屋上へと続く長いエレベーターの中で、ツォンはミッドガルの夜景を見た。もう、決して見ること出来ない夜景だった。きらきらと薄青に光る魔晄の夜景は、奇しくも美しい。ミッドガルの街全体が明るいせいで、星はひとつも見えなかった。下弦の月がたったひとり、ミッドガルの空を彩っていた。

この時期、流行り始めた病があった。その病は細菌性の感染症で、乗り物酔いにも似た症状が特徴だった。健康的な人間には罹患しないが、免疫が弱っているとかかってしまう。致死率はそこまで高くはないが、スラム街の多いミッドガルは歯止めが効かず、パンデミックを引き起こす事態となった。最初は少し、気分が悪くなる程度。徐々に体力が失われ、最後には衰弱死してしまう、そんな病だった。

病はミッドガルを襲い、ジュノンにまでその手を伸ばそうとしていた。神羅カンパニーも数年に渡って病原菌の研究を進めたが、特効薬が開発されるまでに、実に四年もの歳月を要した。

“シンラマイシン”と名付けられたその特効薬は、たった八ミリほどの小さな錠剤だ。この一錠が間に合わず、ライフストリームには多くの命が還ることとなった。


エレベーターはツォンを乗せて、上へ上へと昇ってゆく。屋上についた頃には、地平線の向こうから徐々に橙色の光がさしていて、朝明の風がツォンの頬を優しく撫でた。きらりと一粒の星が光った。彼は月しかいないとばかり思っていたミッドガルの空には、実は明けの明星が輝いており、寂しい月に寄り添っているということを知った。

指先から解けるような心地に、ツォンは思わず目を瞑った。いつかライフストリームに還る時にも、同じように感じるのだろうか。

そして同時刻、ヒーリンにて拘束されているであろう十年前の自身を思って、少し笑った。タイムパラドックスという現象を避けるために、彼は未来の情報の一切を耳に入れることは許されないだろう。

再び目を開いた時、ツォンは椅子に座っていた。手には黒いUSBがしっかりと握られており、彼の任務は無事に終わったということが伺えた。

コンコン、と控えめにドアをノックする音が聞こえる。薄ぼんやりとした視界を捉える目を擦り、今が“ツォンにとっての現代”だということを再認識した。

椅子が置かれているフローリングは、随分と傷になっており、十年前の自身が相当暴れたことを察せざるを得なかった。

「ああ、戻った」
「そりゃ良かった。しかしツォンさん。ナマエが待ってるぜ。何も今日じゃなくたって良いじゃないかと随分お怒りだぞ、と」
「いや、今日じゃなきゃ駄目だったんだ」
「それはナマエに言ってやってくれよ、と」

部屋の奥から、不平を訴えるナマエの声がする。甘い生クリームの香りと、バターが焼ける匂いが漂っていた。ツォンはこんなに朝早くから、ご苦労なことだと微笑んだ。とばっちりでケーキを焼かされているレノは、散々だとばかりに声を荒げていた。

ツォンの左腕に着けた、古い時計が徐々に輪郭を薄くし、真新しい金属の時計へと姿を変えた。立ち上がって奥の部屋にたどり着いた時、ツォンが最も愛おしいと思う女性が、一番の笑顔を咲かせて飛び込んできた。


「ハッピーバースデー!お誕生日、おめでとう!」






___






〇〇〇


腕の中で眠ってしまったナマエの、薄く閉じた唇をそっと喰んだ。柔らかくて、吸い付くような感触は、もう何年も求めて止まなかったものだ。今この場で彼女を激しくかき抱いてしまいたい。その衝動を抑えて、ツォンはゆるりと立ち上がった。薬は渡した。これを彼女が服用すれば、恐らくは。

「愛してる。たとえこの選択が、間違っていたとしても構わない」

頬をぬるい滴が伝う。涙なんてもう、とっくのとうに枯れてしまったと思っていたのに。枕の横にぽつんと丸いしみができた。しみは無数に数を増やして、しばらく消えることはなかった。

永遠を切り取って側に置けるのならば、ツォンは間違いなくこの瞬間を切り取っただろう。ベッドサイドに置かれた包装紙の中、大切に包まれているプレゼントは、もう大分古くなってたけれど、今も彼の左腕で時を刻んでいる。

ナマエはサプライズにしようとしていたのに、うっかりベッドサイドに出しっぱなしだったそれは、朝起きたツォンがすぐに気が付いてしまって。慌てて隠そうとしたナマエの身体が大きく傾いた瞬間を、ツォンは今も覚えている。

彼女の残香に後ろ髪を引かれながら、ツォンは神羅カンパニー本社ビルへと足を運んだ。時間は有限だ。任務を達成せねばならない。


「じゃあまた、十年後で」


ツォンはキーケースに並んだ鍵の中からひとつ、少しだけ古くなった銀色の小さい鍵を取り出して、しっかりと施錠をした。








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