※ファミレス回おまけ






 カナトくんが席を立った。
 目の前には誰も座っていない空席と、半分食べかけのチョコレートパフェ。チョコレートとアイスクリームが混ざりあって、綺麗なマーブル模様が描かれている。突き刺さったスプーンと、汗を掻いたグラス。
 目が離せなかった。溢れてきた唾液をごくりと飲み込む。

「んふっ、流石名前ちゃん、変態だね」
「うわっ」

 教室でカナトくんの背中を眺めている時と同じように、我を忘れていたみたいだった。背後から話しかけられ、驚きに飛び上がる。振り向けば想像通りのライトくんのにやけ顔。さっきまで向こうの席に居たのに、いつのまに背後に移動していたのかとか、もう気にしたら負けだ。

「こ、今度は何なんですか一体」
「なにって、キミ、カナトくんの食べかけのパフェ、物欲しそうに眺めていたでしょ? 間接キスでも狙っていたのかなって」
「……な!」

 わたしの声が裏返ったのは動揺していたからじゃなく、あんまりな言いがかりだったからだ。わたしは溶けかけのアイスクリームとチョコレートクリームとが混ざりゆく芸術美を鑑賞していただけであって、使用済みスプーンを舐め回したいだとか、食べかけのアイスクリームが食べたいだとか、断じてそんな変態行為に及ぶためにパフェを眺めていた訳じゃない! 断じて! カナトくんに誓って!

「動揺してるね、図星だったみたいだ」
「ち、違いますから。なんですかその、好きな女子のリコーダーを舐める小学生男子みたいなの、言いがかりは止めてください」
「えー、だってキミ、そのタイプの人間でしょ?」
「違います」
「そろそろ自分が変態だって事認めたらいいのに」

「わたしは変態じゃない!!!」

 思わず立ち上がって叫んだら、店内の喧噪が一気に静まり返った。お喋りを楽しんでいた筈の周りのお客さんが一斉にわたしの方を見ている。突き刺さる白い視線。かあっと顔が熱くなる。
 ああ、これじゃあまるきり変態みたいだ。

   
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