はっ、とボリスは目を覚ました。
口の中はジャリジャリと砂が入っているようだ。…ええと、何があったんだ?
たしか吹っ飛ばされた相棒を見て、それで…。

「あっ」

目の前には緑の囚人服を着た兎が1匹。

「気がつかれました?」

ホッとしたような笑みを浮かべてその兎は言った。番号…541番。プーチンと言う名だったか。
身を起そうとするが、肩が悲鳴を上げた。

「ダメですよ!一応応急処置はしましたけど…まだ多分外れたままですし」

こいつバカか。
ボリスは目の前に居る脱獄囚に呆れた。

「バカだろ、てめぇ。捕まえられるとか考えてねぇのか?」
「でも…怪我してる人を放っておけないですもん」
「…で、あの赤いのは?」

プーチンのバカさ加減に呆れたが、ボリスは続けた。

「キレネンコさんなら、いませんよ」
プーチンの耳が少し萎れた。

「多分、帰ってくるとは思うんですけど」
「ふぅん」

もう一度、ボリスが身を起こそうとすると今度はプーチンがそっと介助した。
その助けに感謝しつつ、身を起こして辺りを見回すとモスクビッチが一台と、大破したラーダがあった。
…モスクビッチだと?!

「治ってる…」
呆然として呟くと

「あ、僕が直しました。…あの、こっちのラーダも直そうと思ったんですけど、部品が飛んで見つからなくて…」

プーチンが答えた。バケモノかこいつら。2匹そろって。

「…」
「あ、あのもう一人の人ならすぐ見つかると思いますよ!」

プーチンはボリスが黙ったことを変に勘違いしたようだ。

「…?」
「キレネンコさんが探しに行きましたから!」

それで居ないのかと納得しかかったボリスだが、真っ青になった。プーチンが首を傾げる。

「あれ…なんか、まずかったですか?…大丈夫ですよ!食べられたりはしませんから!」
この緑の囚人になぜそれが知れたのかは置いておいて。

「あっ、キレネンコさんだ!」
プーチンが道路をゆったりと歩いてきた赤い囚人を見つけた。
彼の手にはボリスの相棒、コプチェフの耳が握られている。哀れ。

「見つけてきた…存外遠くまで飛ぶな」
その台詞でボリスが切れそうになったのは言うまでもないが、助けてもらった手前、自重した。

「コプチェフ…?」
ボリスが心配そうに覗き込む。しかし、すぐに爆笑に変わった。

「あっ、あはははは!ちょ、その顔おかし!あははははは!」
「ちょ、ボリスさん?」

すぐにプーチンも覗き込んだが、彼も笑いを堪えるのに必死になってしまった。
なぜなら、顔面で見事に受け止めたドラム缶のせいで、彼が持っていた双眼鏡は目の周りに押し付けられてしまい。
見事に眼鏡のような赤い縁取りができてしまっていた。
そのけたたましい笑い声で、コプチェフが目を覚ます。

「いったぁ…ちょ、ボリス…なんで笑ってんの人の顔見て」
「いや、マジうける。うあはははは!」
「…いま、ギャグみたいですよ、顔が」

プーチンが笑いを堪えながら鏡を差し出す。恐る恐ると言った態でコプチェフは覗き込んだ。

「ちょ!なんだよこれ!」

その反応がおかしかったのか、更にボリスは笑い転げた。
一回上戸に入るとしばらくは笑いが止まらない。

「…横隔膜、痛ぇ」
散々笑い転げた後、ボリスはその一言で真面目な顔に戻った。

「ひどいよ、ボリス」
コプチェフはまだ不貞腐れている。


「さて」ふてているコプチェフは放っておくとする。ボリスは立ち上がって、ズボンを叩いた。

「お前ら、こっからさっさと行け」
きょとんとした顔をした脱獄囚二匹をみて、ボリスが続ける。

「俺らはミリツィア本部に連絡入れる。その間にさっさと逃げろ」
「え…でも…」
「どうせ今、ラーダはぶっ壊れてるからな。しょっ引けねぇよ」

それに、とボリスが付け加える。

「ケガの手当てとか借りがある。その借りなしで今度は捕まえてやるよ」
「…わかりました」

プーチンはモスクビッチに乗り込むと、エンジンをかけてすぐに発進した。
ずいぶんモスクビッチがよろめいたが、それは大丈夫だろう。


「ボリス」
遠くなっていくモスクビッチを見て、コプチェフが言う。

「悪かった」
ボリスはバツが悪そうにコプチェフを見上げた。

「それはどういう意味で?」
「笑ったのもだし、逃がしたのも」
「わかってるならいい」

コプチェフはそう言って笑った。
そのあとボリスがまた笑い出したのは言うまでもない。















fin.






>>幹丸様!相互記念小説ありがとうございましたっ(>_<)最初から最後までにやけっぱなしだったんですが、なんだコレ囚人たち可愛いすぎるーっ!!!た、確かに、ぶっとばされたコプはああなってたと思いますよ、うん。かわいそうに…(笑)あ、爆笑するボリたんごちそうさまでした。相変わらずぶち抜きでかわいかったです(〃Д〃)それも最後男前だったし! またこの四人組書いてくださいねっ。楽しみにしてますのでっ。これからも、是非是非よろしくお願いします!ありがとうございました〜! ハル









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